みなさま、こんにちは。Kazuto Tanabe です。

今回は、WWWDC 22 で発表された Apple の新しい USB-C 充電器「デュアルUSB-Cポート搭載35Wコンパクト電源アダプタ」および「デュアルUSB-Cポート搭載35W電源アダプタ」をレビューします。

両製品は、Apple 初の 2ポートタイプの USB-C 充電器で、1ポート使用時最大35W出力、2ポート同時使用時は17.5Wずつの出力が可能な製品です。これらは、MacBook Air with M2 向けのアクセサリーですが、MacBook Air 本体の発売より一足早く販売が開始されました。

MacBook Air with M2 との使用感については、本体発売後に追記します。

・開封

パッケージ

パッケージ裏面

内容物は共に本体と取り扱い説明書

本体(コンパクトの意味が瞬時に理解できた)

USB-C 端子(厚みもコンパクトがコンパクト)

本体の各種表記(クリックで拡大)

プラグは折り畳み式

コンパクトには指に沿う窪みが存在

非コンパクトは Apple ワールドトラベルアダプタキットに対応する

旧500円との比較

USB-C 端子周りの加工にやや違いがある

・本体の挙動

両製品は、Apple 初のマルチポート USB-C 充電器です。

USB-C 充電器ではポートが複数ある場合、単独使用時と複数使用時で充電器の挙動が大幅に変わることが一般的です。両製品もその例に当てはまっており、2ポート使用時の挙動は以下の通りに案内されています。

2台の機器を充電する場合は、電源アダプターのどちらかのポートに機器を接続します。2台の機器を接続すると、それぞれの機器の必要電力に応じて、自動的に電力が分配されます。ほとんどのデバイスでは、2台のデバイスを同時に充電する場合、電力は均等に分配されます。

・MacBook と iPhone または iPad を接続した場合、それぞれのデバイスに最大17.5Wの電力が供給されます。
・iPhone と iPad を接続した場合、それぞれのデバイスに最大17.5Wの電力が供給されます。
・MacBook、iPhone、Apple Watch、AirPods を接続した場合、MacBook、iPhone は最大27.5W、Apple Watch、AirPods は最大7.5Wの電力を受け取ります。

どちらかのデバイスがさらに電力を必要とする場合は、もう一方のデバイスとその充電ケーブルを電源アダプタから抜いてください。

合計35W出力を均等に分配する仕様は、マルチポート USB-C 充電器において一般的な挙動です。

しかし、3番目のデバイス毎に最適な電流を「確実に」流す機能を有している充電器は存在せず、ここに「Apple が Apple 製品のために作った充電器」である最大のアドバンテージが発揮されているように思います。

・本体の仕様をチェック

ここでは、USB-C ポートの Power Data Object(PDO)と USB-PD 以外の急速充電への対応の有無、過電流に対する保護機能の3点を確認しました。

PDO は表記よりも大きい値の場合、デバイスを過電流により破損させる恐れがあり、小さい場合は景品表示法上の問題が生じます。また、USB- PD 規格では USB-PD 以外の急速充電への対応を禁止しています。過電流に対する保護機能は、異常発熱・出火などを防ぐ目的の保安機能として実装されています。

問題のある製品の場合、主にこのいずれかのポイントで問題点が露見するため、本誌ではこの3つの検証結果を主に使用しています。

なお、両製品の仕様は全く同じであり、各USB-C ポート(合計4つ)にも差異はなかったため、検証結果は1つのみの記載とします。

確認の結果、Apple が提供する PDO と実際の PDO が一致しており、問題点は見当たりませんでした。また、ルール上、規格違反となる USB-PD 以外の急速充電規格への対応も、自社の Apple 2.4A すら切り捨てており、規格に完全に準拠する形となっています。

次に、過電流に対する保護機能の動作状況を確認しました。

確認の結果、大きな問題は認められず保護機能は正常に動作するといえる状態であることを確認できました。

最後に、MacBook Air 2018、iPad 9、iPhone 15 Pro、iPhone SE(第1/2世代)での充電状況を確認します。

確認の結果、MacBook Air で充電、iPhone・iPad で18W/20Wの高速充電が作動していることを確認できました。

また、iPhone SE(第1世代)において、最大5V/1.5Aでの充電となっており、両製品が Apple 2.4A に対応していないことも確認できました。

・存在意義と使用感

両製品は、¥7,800(税込/$1=¥125/リリース時価格)と、同クラスの USB-C 充電器(35W/2ポート出力)としては、非常に高額です。

また、35W出力というのも、2ポートであれば40Wが主流な界隈において、かなり中途半端な出力といえます。実際、MacBook Air の同梱品の割に MacBook Air と iPhone の同時充電はおろか、iPhone と iPad の同時充電すらまともにできないW数です。

デュアルUSB-Cポート搭載35Wコンパクト電源アダプタ

そのため、筆者自身も「この充電器の存在意義は何なのか?」と聞かれると、返答に困ります。

とはいいつつも、Apple 製品との互換性は「完璧」であり、電流チェッカーで充電の様子を眺めていても、それぞれのデバイスが対応する最大の充電速度が提供されているように思います。

また、製品保証の面から見ても純正品は有利となります。というのも、Apple は製品修理が保証対象であるか否かを判断する際に異様に純正充電器を使用したかを気にします。そのため、電源周りの異常・修理の際に純正品を使用していない時に発生した故障であると判明した場合、まず保証は適用されません。

デュアルUSB-Cポート搭載35W電源アダプタ

これまでは Mac でこの対応を行うことが多かった印象ですが、近年では iPhone や iPad でもこの質問を受けることが増えており、デバイスを余裕でぶっ壊す充電器が出回っている昨今の情勢も加味されているのかもしれません。

万が一の際にも充電器、ケーブル、デバイスが全て Apple 製であれば、保証適用がスムーズに行われるため、使用していた ACアダプタでモメるという「めんどくさい案件」は回避できるため、保守の仕事もする筆者にとってはこれ以上なく都合の良い充電器ではあります。

同時は無理です

また、MacBook Air と Apple Watch もしくは AirPods の同時充電用、若干の速度低下に目を瞑って、iPhone と iPad の同時充電用としてなら、「ギリギリ及第点」といえるため、「Apple 純正充電器」に価値を感じる人にとっても魅力的な製品であると思います。

充電器の基本的な性能としては、適度なサイズ感、適度な重量、折り畳みが可能なプラグなど、デザイン性で実用上不便に感じることはまずないでしょう。

筐体についても、手にひっかかる感触があるプラスチック素材となっており、手から滑り落ちるというリスクは軽減されているように感じます。また、コンパクトには指に沿う形の凹みが作られており、これもまた絶妙に使いやすく、この辺りの配慮は「流石 Apple」と感じました。

・品質どうなってる?

長年、Apple 製品やその純正アクセサリーを見てきた身として、言いたいことが1点。

品質管理どうなってんだ?

その理由は、以下の画像を見ていただければわかりますが、パッケージの破損、内部梱包材の破損など、いつもの Apple らしくない品質です。

角が折れてる…

破れてる…

「いやいや。パッケージはまだしも内部の梱包に文句付けるとか」と思われると思いますが、筆者が神経質な人間という話もありますが、それがどうこうよりも「Apple は従来このレベルを許容してこなかった」ため、品質基準の低下を疑わざるを得ません。

事実、公私合わせて十数年で Apple Online Store で購入したアクセサリーの点数は100点に迫りますが、このような事案は初めてです。リセラーから購入し、その在庫管理がなっていないのはまだわかりますが、Apple 公式かつ内部にも問題があるというのは看過できません。

もちろん、これは筆者が Apple に対して求めている当然の水準を満たせていないという話であり、他のメーカーがブッ潰れた箱で製品を送って来ようが、中身が生きてれば筆者は気にしません。

・総評

安易にオススメはしない。

両製品の完成度をひとことで言い表すなら、このくらいがちょうど良いかと思います。

根本的に35Wという出力はあまりにも中途半端で、いくら自社デバイス向けとはいえもう少し何とかなったのでは?と感じます。また、それを(円安が進行する中とはいえ)各¥7,800($59)で販売するというのも、不便を強いられるなら他社製のもっと良い製品を買えば良くない?と感じてしまう理由です。

そして、最大の不満点は品質問題です。安全性に関しては何の問題もありませんし、デザインも他の製品との調和という意味では非常に良いものだと思います。ですが、パッケージと内部梱包材の損傷は気分が良いものではなく、過去の同社の製品品質を考えれば絶対に有り得なかったことです。

とはいえ、「これが欲しい!」と思う方に「やめた方が良いよ」というほどのものではなく、むしろ納得の上であれば互換性や安全性の観点でいうと、Apple 製品向けの USB-C 充電器としては最適解でしょう。

 

デュアルUSB-Cポート搭載35W電源アダプタ
デュアルUSB-Cポート搭載35Wコンパクト電源アダプタ

最終更新日:2023年9月23日

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