みなさま、こんにちは。Apple 株主の Kazuto Tanabe です。
この記事では、Apple が毎年2〜3月頃にかけて実施している学生向け割引キャンペーン「新学期を始めよう」を株主が絶対にオススメしない理由をご紹介します。
Contents
・そもそも「新学期を始めよう」キャンペーンとは?
「新学期を始めよう」キャンペーンは、毎年2〜3月に実施される学生・教職員向けの製品割引キャンペーンです。
Apple が製品の割引を行うことは稀であり、日本においては新年の「Apple の初売り」以外存在しません。ですが、長年教育市場を重要視する同社は世界各国の新入学の季節に合わせて、Back to School(新学期を始めよう)キャンペーンを展開しています。
このキャンペーンでは、購入する製品に対し、次の買い物などで使えるギフトカードを付与するもの、年によっては AirPods をプレゼントするなどパターンは様々です。
今年、2023年のキャンペーン内容は iMac、MacBook Pro、MacBook Air、iPad Pro、iPad Air 5 のいずれかを購入した人に最大¥24,000分のギフトカードを付与するというものです。
・特異な日本市場の Back to School
先述の通り、Apple は各国の新入学の季節に合わせ Back to School キャンペーンを展開しています。
しかし、諸外国と日本では一般的な新入学の時期が異なり、それにより Back to School の展開時期も大きく異なります。
日本市場では、例年2〜3月に実施されている Back to School キャンペーンですが、諸外国では例年7〜9月頃に実施されています。この時期に関しては、先述の通り各国の新学期事情に合わせて行われているものなので、展開時期の違いについては納得のいくものです。
・年明けという Apple 的には最悪のタイミング
例年、Apple は9、10月に iPhone などの主力製品の新製品を出し、ホリデー商戦に備えながら1年を終えます。また、この時期に当たる Q1 の決算は同社の決算の中で最も大きな利益を計上するため、最重要視すべき時期です。
この次に同社が新製品を出すのは、早くて3月。遅ければ6月の WWDC まで何も新製品が出ない。ということもあります。そのため、年明けからの数ヶ月間は Apple にとっては静寂が続く期間であり、私たち ICT メディアも暇な時期であったります。
ここで、昨年2022年の Back to School 対象製品を見てみましょう。
iMac(2021年4月)、MacBook Pro(2020年11月/21年9月)、MacBook Air(2020年11月)、Mac Pro(2019年12月)、Mac mini(2020年11月)、iPad Pro(2021年4月)、iPad Air 4(2020年10月)
以上が2022年の Back to School 対象製品となります。「製品名の後ろにある括弧書きの中は何?」という話ですが、これはその製品の販売が開始された年月です。こうしてみると、MacBook Pro 2021 はともかく、今年の Back to School 対象製品は型落ちモデルが多数ラインアップされています。
2023年の対象製品では以下のようになります。
iMac(2021年4月)、MacBook Pro(2023年1月/22年6月)、MacBook Air(2022年6月)、iPad Pro(2022年10月)、iPad Air 5(2022年3月)
2023年の対象製品は、登場から半年未満のものが多く「当たり年」と言えるかもしれません。特に、MacBook Pro 14/16に関しては23年1月にリリースされたばかりですので、そのモデルを実質的な割引で購入できるのはかなり有利だと思います。
しかし、iMac および iPad Air 5 に関しては次項以降が当てはまりますし、MacBook Pro と同時に発表された Mac mini は今年は対象となっていません。
・日本市場においては在庫処分の意味合いが強い
筆者が Back to School を推奨しない理由は、「在庫処理に付き合わされているだけだから」という理由以外にありません。
MacBook Air 2022
事実、2022年の Back to School 対象製品の後継モデルが3月の Apple Event(Peek performance.)で登場しており、Back to School で特に人気の MacBook Air や MacBook Pro 13 も6月の WWDC22 で新型が発表されました。
そのため、「Back to School でお得に買えた!はっはっは!」と思ったが最後。最悪、購入後、数週間で新製品が登場し、購入したばかりの製品がゴミと化す。という事案は十分に起こりえます。
裏を返せば、諸外国の Back to School キャンペーンはこれからであるため、海外の学生は最新の製品を安く購入できることになります。
・なぜ日本だけ在庫処分市になるのか
ここで疑問が湧くと思います。なぜ、日本市場だけ在庫処分に付き合わされるのか?ということです。
これについては既に答えが出ており、「Apple が教育市場を重視しているから」という理由以外に考え付くものはありません。
そのため、新入学の季節として世界では一般的な9月に向け、主にスクールライフで活躍する Mac や iPad の新製品を投入することは米国企業の経営戦略上、ごくごく自然なことといえます。
同社が教育市場を重視する理由には、将来の顧客獲得の意味合いもあるため、過剰な程の製品割引やサポートを実施しています。
これだけを読むと、「Apple が日本市場を舐めているのではないか?」と感じる方もいるかもしれませんが、それは断じて否です。同社の決算報告の国別売り上げに「日本」(それ以外はアメリカ、欧州、中国、アジア太平洋という括り)というカテゴリーが存在する上、「アジア太平洋」の売り上げよりも日本一国の売り上げの方が多い時期もあり、同社の売り上げの中で無視できるような規模の市場ではありません。
また、iOS のシェアが Android よりも高く(こちらは調査時期や会社によって若干の差がある)、アメリカ以外の国では世界初となった Apple Store が置かれていたのも銀座であり、同店は Apple Store 誕生後、世界でも稀な歴代全ての Apple CEO(Steve & Tim)が訪れた店舗でもあります。
では、なぜ Apple が日本市場を冷遇するのか。それは単純に「新入学のタイミングが悪い」に尽きるでしょう。(そもそも Apple は冷遇するつもりはないが、どうしてもそうなってしまうくらいが適切な気がします)
・ところでゴミは言い過ぎじゃない?
少額とはいえ、Apple の株主が同社の製品を「ゴミ」というのはいかがなものか。そう感じる方も多いと思いますし、私もそう思いたいです。
しかし、Apple のイノベーション力を持ってすると、旧製品を「ゴミと言わざるを得ない」状況になります。
近年、SoC とカメラの強化しかやることがなく、ネタ切れ感も良いところな iPhone を見ていると、Apple のイノベーション力に疑問を感じるかもしれません。しかし、Mac を見るとブレイクスルーどころではない技術革新が起こっています。
その技術革新とは、紛れもなく Apple Silicon であり、一番最初に登場し、ラインアップの中では最も性能が低い M1 ですら、Mac Pro(2013)や iMac Pro といったデスクトップの高性能モデルに肉薄する性能をノートパソコンで実現しており、現状最高スペックの M1 MAX に至っては、Mac Pro(2019/18コア)モデルに匹敵するものです。
さらに、WWDC22 で発表された M2(第2世代 Apple Silicon)に至っては、現行の Mac Pro(2019)のベースモデルよりも性能が高くなっています。
これを読むと、「いや、別に私そんなにスペックいらないんだけど…」「安い方がありがたい」という意見が出そうですが、先日出た iPad Air を比較するとそうは言えなくなる事情があります。
iPad Air 5
先日リリースされた、iPad Air 5 の主な改良点は SoC と Cellular モデルの5G対応です。
従来、iPad Air シリーズには「Apple A シリーズ SoC」が採用されてきましたが、iPad Air 5 より、Apple M1 チップの採用がなされました。また、Cellular モデルの通信方式が4G LTE から5Gへとアップグレードされました。今後、モバイルネットワークは5Gに移行していくため、この2モデルでは通信速度に大きな差が生まれていくことになります。
現状ではボロカスに言われる日本の5Gネットワークですが、それは3Gから4Gに移行した時も同じであり、数年後にはより高速な通信を幅広いエリアで行うことができるようになるはずです。その時に、どちらが利便性の面で優れているか。これは言うまでもないと思います。その違いが最悪、たった数週間で生まれる。そう考えると、ね?
また、現状では「iPad に M1 なんてのったって無駄なだけ」と言っている人が一定数いますが、それは「過去」の話であり、Apple Silicon(M1)iPad でしか使えない機能(Stage Manager)が iPadOS 16で実装されています。このことからも、将来性を見越すなら常に最新モデルを買うべきです。
これに加え、iPad Air 4 は学割の対象になっていましたが、iPad Air 5 の登場に伴い終売となったため「新学期を始めよう」キャンペーンから iPad Air が消えた上、iPad Air 5 はキャンペーンの対象にはならない。という点も、iPad Air 4 の在庫処分に大きく貢献したこととなり、新製品発表前の在庫減らしに付き合わさせられたともいえます。
・それでもゴリ押しする人がいる理由
理由は多種多様に渡りますが、Apple 製品の買い時は発売から3ヶ月以内であり、安いからといって旧製品を買うとロクでもない事態に直面する場合があります。
しかし、SNSやブログを見ていると「お得に購入できるチャンス!」と言って、Back to School キャンペーンの利用を促進している人がいます。
これは、単にその人間が Apple 製品に対する知識や今後の展望の認識が薄い、Apple からお金をもらっているかの2択であり、ユーザーの利益よりは自己利益を優先しており、どのみち信用する必要はない部類の情報だと思います。
前者はともかく、「Apple ってお金撒いてるの?」と思う方がいるかもしれませんが、Apple は製品やサービスの購入に対しアフィリエイトプログラムを実施しており、1購入毎にいくら。といった具合で紹介者に金銭報酬を支払っています。
ですので、本当にユーザーのためを思って紹介しているのか、金欲しさに紹介しているのか。その点はよくよく見極める必要があると思います。もちろん、本誌も類似のアフィリエイトプログラムを利用している立場ですので、制度自体を否定するつもりは毛頭ありません。
・まぁ、ほどほどに
以上が、筆者が「新学期を始めよう」キャンペーンの利用を推奨しない理由です。
日本でだけ、在庫処理に付き合わされていると思うと、なかなか利用を躊躇してしまうのではないでしょうか。また、Apple の株主が Apple の売り上げを下げそうなことに言及するのはいかがなものか、しれっとアフィリエイターがもらい事故を受けているなど、この記事にあまり良い思いをしない層もいるかと思います。
ですが、新製品が出たらポンポン買い換える Apple 信者ならともかく、1つの製品を数年間使用する一般的なユーザーにとって「買い時」というのは非常に大切になってきます。ですので、何でもかんでも「コスパが良い」「安い」という単純な理由だけで、製品の買い時が判断されている現状には疑問を感じています。
とはいえ、新入学に伴いデバイスがどうしても必要な層は必ずいますので、そのような方が次のデバイスが出るまで何も買わない。というのは非現実的な話であるため、状況に合わせて判断することは忘れないようにしてください。
この記事が皆さんの役に立つかは「皆さんの考え方次第」ではありますが、物事には必ず「裏」が付きまといます。それらと相談して、「新学期を始めよう」キャンペーンを利用するか否かを判断していただく参考になれば幸いです。