みなさま、こんにちは。Kazuto Tanabe です。

今回は iPhone にまつわる面白い話として、Apple ユーザーの中では有名な「とある壁紙」の小話をご紹介します。

その壁紙とは、初代 iPhone のプレス画像にも使用された clownfish(クマノミ)の壁紙です。

Via: MacRumors

この壁紙は、初代 iPhone こと iPhone 2G にしか搭載されておらず、同機種は iPhone の中で唯一日本での販売がなかったモデルであることから、日本ではあまり馴染みのない人が多いかもしれません。

なぜ、今になって iPhone 2G の話をしているのか?と思われそうですが、今秋にリリース予定の iOS 16 の新しい壁紙として、このクマノミの壁紙が復活するそうです。

過去には地球の壁紙が復活していることから、今回の壁紙復活は特別なことではありません。

・実は…

上記の壁紙を見て、ファインディング・ニモのモチーフとなった「カクレクマノミ」を連想する方が多いと思います。

水族館でも人気者

しかし、先ほどの壁紙と見比べてみると、なんとなく雰囲気が違う気がします。

具体的には、体色がカクレクマノミの方が鮮やかであり、白いバンド(シマシマ)も太いように見えます。さらに、カクレクマノミのヒレは黒縁になっており、その他でも壁紙のクマノミよりも黒縁がハッキリしています。

お気づきかも知れませんが、似ているように見えて、この2種は別種であり、同じクマノミ科ではあるものの、iPhone のクマノミは「スパインチークアネモネ」というクマノミです。

スパインチークアネモネ

魚類においては、このような見た目が似ている魚は数多く存在し、「ココスピグミーエンゼル」と「ソメワケヤッコ」、「ロイヤルグラマ」と「バイカラードッティバック」などが存在します。

・似てるか?

iPhone の壁紙と上記のスパインチークアネモネを比較すると、「なんか違うんじゃね?」と感じる方もいると思います。

それは、「どの場所に住んでいるのか」で現れる個体差です。スパインチークアネモネ自体、インド太平洋の広い範囲に分布しています。ですが、アジア周辺、オセアニア周辺、スマトラ周辺でカラーバリエーションにかなりの差があります。

iPhone の壁紙に使用されたスパインチークアネモネは、体色がオレンジで白色のバンドが太いことが見て取れます。これは、オーストラリアなどのオセアニア周辺で見られるスパインチークアネモネの特徴です。上記の画像は色が濃く、バンドが細いことからアジア周辺で見られる個体です。

今回の件とは関係ありませんが、スマトラ周辺で採取されるスパインチークアネモネは白色のバンドがゴールドに見えるため、スパインチークアネモネの中では価値が高いとされています。

ハタゴイソギンチャクは触手が短く細い

また、iPhone の壁紙のスパインチークアネモネが共生しているイソギンチャクは、サンゴイソギンチャクと思われ、カクレクマノミはハタゴイソギンチャクとの共生が一般的であることからも、サンゴイソギンチャクとの共生が一般的なスパインチークアネモネで間違いないといえます。

生息地によりカラーが異なるその他の代表例としては、「ホンソメワケベラ」と「ハワイアンクリーナーラス」があります。

・ちなみに

カクレクマノミでなく、スパインチークアネモネである根拠は以上で十分だと思います。

しかし、カクレクマノミの近縁種には「ブラックオセラリス」「ペルクラクラウン」「スノーフレークオセラリス」なども存在します。前2種は誰が見ても違うことが明らかであり、後者はORAが人工的に生み出した産物なので、そもそも考慮の対象にはなりません。

また、カクレクマノミとスパインチークアネモネ共に国内での流通量は非常に多く、カクレクマノミについては鹿児島のブリード品がよく出回っています。共に販売価格は¥1,000ほどで、昨今の世界情勢の影響もさほど受けていないように思います。

・最後に

お前、魚の知識もあったのかよ!と言われそうですが、かれこれ10年以上、海水魚を飼っており、個人的にはカクレクマノミは後ろにいるレベルで身近な生き物です。

スパインチークアネモネに関しては、凶暴なので飼おうとは思ったことはありませんが、まぁ、見慣れた魚です。水族館ではあまり見ない印象(マクセル品川にはいる)です。

Apple が なぜ iPhone 2G にクマノミの壁紙を搭載したのかは謎ですが、iPhone 2G が発表された2007年は、03年に公開されたディズニー・ピクサーのファインディング・ニモの影響で、各国でクマノミ人気が加熱し、乱獲や違法採取が問題にもなりました。

Apple に「iPhone の中でクマノミを見れるようにしたから、それで我慢しなよ」という意図があったかどうかは、謎ですが、再び iPhone に伝説の壁紙が戻ってくるのは嬉しいですね。

(ちなみに、iPhone 6s の魚はベタという魚です)