みなさま、こんにちは。Kazuto Tanabe です。
ガジェットツウのみなさまは、iPhone 17 シリーズをどうご覧になっているでしょうか。
世間ではデザインが〜、価格が〜など、様々な意見が飛び交っており、筆者は秋を感じています。筆者は今年も黙って iPhone 17 Pro を購入しようと思っています。
その iPhone 17 シリーズが発表された発表会で、同時に新しい Apple 純正 USB-C 充電器が密かに発表されています。
今回は、新しく登場した Apple 40Wダイナミック電源アダプタ(最大60W対応)をご紹介します。
※本記事は暫定版です。後日、大幅な内容の変更が行われます。
開封
パッケージ
パッケージ裏面
内容物は本体と取扱説明書類
本体
スイングプラグ式
USB-C ポート
35W版と比較
サイズは一回り小さい
近年稀に見る謎製品
本製品を初めて見た時、筆者は困惑しました。
その理由は、通常であれば1つのW数しか表記されない USB-C 充電器に、40Wと60Wという2つの表記が共存しているからです。
「結局、40Wの充電器なの?60Wの充電器なの?」と、あまりにも謎だったため、こうしてレビューしています。
購入時は「何か特別な機能があるのかな?解明できないだろうなぁ」と思っていましたが、パッケージを読めばその意味がすぐに理解できました。
側面のシールに中国語ではあるが AVS の記載がある(クリックで拡大)
商品の簡易説明(クリックで拡大)
要は、USB Power Delivery 規格に定義されている SPR AVS (Standard Power Range Adjustable Voltage Supplied) に対応した充電器だということです。
これは、同じく USB-PD の 出力調整機能である PPS と類似したもので、デバイスに応じた最適な電力を供給する機能となります。
これを一般消費者に説明したとて、「なんのこっちゃ?」となるだけですので、2つのW数を併記し、「優れた充電器ですよ」ということをアピールしているようです。
取扱説明書にも、日本語で出力に関する同等の案内がなされており、電圧だけが可変していることから、SPR AVS の AVS といって問題ないでしょう。
よくよく読むと面白いことが書いてある
なお、パッケージには「対応するソフトウェアとハードウェアが必要です」との記載があるため、これ以降はこの意味を探っていきます。
充電器の仕様を探る
Apple は本製品の販売ページに「高速充電をする場合は、iPhone 17モデル(約20分で50%充電)またはiPhone Air(約30分で50%充電)とダイナミック電源アダプタを組み合わせてください」との記載を行っています。
また、説明書には USB-C ケーブルもしくは MagSafe充電器を使用できると記載されています。
ここに先ほどの「対応するソフトウェアとハードウェアが必要です」を組み合わせると、SPR AVS に対応する iPhone は iPhone 17 シリーズ(A19搭載)しかないのでは?という疑問を持ちます。
事実、iOS 18.6.2 を搭載した iPhone 16 Pro では、現時点で25W程度でしか充電されておらず、本稿は iPhone 17 シリーズ発売前および iOS 18 正式リリース前に執筆しているため、詳細は不明です。
しかし、Apple の販売ページの互換性欄には iPhone 15 シリーズ以降の iPhone が挙げられているため、将来的なソフトウェアアップデートで、記載のある機種に関しては何らかの変更が加えられるのではないか?ということも想像できます。
現時点で iPhone 16 Pro、iPad Air 11 M2 での充電状況は以下のようになっています。
- iPhone(23W)
- iPad(30W)
確認の結果、iPhone および iPad ではこれまで通りの充電速度となっていることが確認できました。
また、iPhone にてバッテリー残量が0%の状態から20分間で回復できた%は38%と、本製品が有する最大のパワーを発揮していないことがわかりました。
ただし、現状でも MacBook Air 上では60W充電器として認識されており、Mac で使用する場合は60W充電器として機能するようになっているのかもしれません。
クリックで拡大
また、いつも通りのチェッカーを用いて各種仕様を確認しました。
- PDO
- 対応する急速充電規格
注目すべきは、急速充電の対応リストの左下に記載のある「PD3.0 40W」という表示であり、本チェッカーは SPR AVS の実装が開始された PD 3.2 には対応していないため、MacBook Air とは違い40W充電器として認識しています。
Apple のいう「対応するソフトウェアとハードウェアが必要です」は、特定の Apple 製デバイスとそれを動かすカスタマイズされたソフトウェアが必要なのか、単に SPR AVS に対応した製品が必要という意味なのか、現時点ではわかりませんが、ここまでの検証ではそのどちらともいえる内容になっています。
iPhone 向け充電器の再設計が必須に
Apple の意味深な表記はさておいたとしても、少なくとも iPhone 17 シリーズ以降の iPhone では従来の高速充電方式では「高速充電」とは呼べなくなります。
今後、iPhone を真の意味で高速充電できる USB-PD 充電器は SPR AVS に対応する必要に迫られた可能性が高く、PPS を無視し続けた Apple としては意外な展開です。
本稿執筆時点では、市販されている USB-PD 充電器に PD 3.2 対応製品は見られず、規格自体も登場から10ヶ月程度と一般メーカーが実装に動くような段階ではありません。
正直、30分で50%以上が20分で50%に変わったからといって、充電環境を一から再整備する必要に迫られるのは筆者くらいであり、世間一般的にはガン無視しても何ら問題はないと思います。ただ、メーカーサイドとしては、そうもいってられず、今後大量に対応製品が登場することでしょう。
そういう意味では、新しい USB-C 充電器の購入は控えるべき時期ともいえるでしょう。
使用感
この記事が、USB-C 充電器のレビュー記事であることを忘れそうになりますが、他の製品と同様に充電器としての感想を書いておきます。
Apple の充電器ですね。というデザイン。
いってしまうと、40W or 60Wの USB-C 充電器という点では、他にもっと良い製品があります。
しかし、本製品に求められるのは Apple 純正品であるという点、現状では iPhone 17 シリーズを最速で充電できる唯一の充電器っぽいことだと思います。
正直、この2点のみで他の充電器の存在を凌駕するものであり、あえて本製品を選ぶ十分な理由になると感じます。
また、iPhone を充電するための純正充電器として最もポピュラーな20W充電器と比較して、20Wの実測値が58g、本製品は81gと、23gの重量差があります。
実はそんなにサイズは変わらない
しかし、プラグが折り畳めること、実質的に60W充電器であることを考慮すれば、本製品がこれからの純正充電器のスタンダードといって良いと思います。
USB-C ポートの向きについては好みが分かれることもあるでしょうが、一般的な下向き配置であり、コンセントに接続しても縦に関しては他の口を塞がないなど、必要最低限の利便性は確保されています。
暫定総評
iPhone 17 シリーズを購入した人は是非。
本製品はそういえる製品だと思います。本稿執筆時点では iPhone 17 シリーズは未発売、iOS 18 もリリース前と、本製品のポテンシャルを最大限引き出せる環境は整っていません。
しかし、基本的な仕様やユーザーエクスペリエンスを含むデザインについて、不満を持つ人はまずいないでしょう。
とはいえ、シングルポートの60W USB-C 充電器で¥6,480はかなり攻めた金額であり、筆者が購入してきたシングルポート USB-C充電器の中で、最も高価な製品になるくらい極端な存在です。
だからといって、買わなければよかったとは全く感じず、iPhone 17 シリーズの機能を最大限に引き出せるアクセサリーの1つとして、むしろここ数年の中で最も買ってよかったと感じている製品です。