みなさま、こんにちは。Kazuto Tanabe です。
今回は、ダイソーで新たに販売が始まった充電器のレビューをします。以前、本誌でレビューしたダイソーの20W USB-C 充電器は完成度が高く、とりあえず買っておいて損はない製品だとご紹介しました。
そのノリで、新しく発売された USB-A がついた20W USB-C 充電器を買ってみたら、お話にならないレベルの製品だったよ。というのが今回の要約です。
記事の内容としては、ボロカス一歩手前になりますので、苦手な方はご注意下さい。
なお、本製品をシガーチャージャーとした製品も存在しますが、本製品と同様にオススメできる品ではありません。
・開封
パッケージ
本体
ecola なる謎のブランド
プラグは折り畳み式
USB-C と USB-A ポート
・規格違反品
本製品には、詳細を確認しなくともわかる規格違反が存在します。それは、USB-C と USB-A の出力が合計18Wという点です。
USB-PD 規格では、USB-C と USB-A の独立・分離実装を求めています。そのため、USB-C を使用中だからといって USB-A の出力が減る、その逆の A を使用中だからといって C の出力が減る。という仕様(CとAの回路を一緒にしてしまう)は、規格違反となります。
とはいえ、規格上そうなっている。というだけであり、実用上の問題があるのか?と言われれば「ほぼない」ため、あまり気にする必要はないかと思われます。
・本体の仕様をチェック
ここでは、充電器の仕様がどのようになっているかを確認します。
Power Data Object(PDO)、USB-PD 以外の急速充電への対応の有無、過電流に対する保護機能の3点を確認し、安全上の問題がないか、景品表示法上の問題がないかを確認します。
確認の結果、パッケージに記載がある PDO と実際の PDO が一致していました。また、パッケージには一切記載はありませんでしたが、PPS にも対応するようです。PPS の実装方法には問題は見受けられませんでした。
なお、対応する急速充電に関しては USB-PD 充電器は USB-PD 以外の急速充電規格に対応することを禁じているガイドラインに反し、Quick Charge などへの対応が見られます。ただし、実装方法に問題は見受けられなかったため、安全性への影響はありません。
また、アナライザー上では22W充電器として認識されていますが、PPS 対応製品では数Wほど実際の数値よりも高く表示されることが多く、充電器側の問題ではないと推定されます。
次に、過電流に対する保護機能の動作状況を確認しました。
確認の結果、USB-C ポートの保護機能が動作するタイミングは公称値+0.5A程度であり、この程度であればしきい値として妥当なものであることから、保護機能は正常に動作するといえる状態にあります。
しかし、USB-A ポートは基本的な5V出力時にも関わらず最大3.6A(+1.2A)の出力が可能でした。本製品の USB-A ポートは Quick Charge 3.0 に対応しますが、このテストでは Quick Charge の出力は要求していません。
USB Battery Charge(USB-BC)では、最大3Aまでの出力を容認していますが、3Aを出力する場合は USB-C 端子の採用が必須となります。そのため、USB-A 端子にも関わらず 5V/3A 出力が可能である本製品は、USB の規格には沿わないものです。
ただし、デバイス側に完全な安全機能が備わっていれば、すぐさま重大事故に繋がるということはないと推定されます。なお、Quick Charge での保護機能は大きな問題はないと思いますが、その他の問題が存在します。(後述/*1)
最後に各種デバイスで、USB-C ポートからの充電状況を確認しました。
確認に使用したのは、iPad 9、iPhone 14 Pro、iPhone SE(第2世代)で、高速充電が正常に充電が作動していることを確認できました。
・USB-A ポートがグダグダ
本製品は、USB-A ポートが正常に機能しているとは言い難い状態となっています。
過電流保護のテスト結果でも触れましたが、それに関連するもの、それ以外にも問題点が見られました。
まず、1点目としてデバイス側で充電器ではなく USB アクセサリーとして認識される率が高く、iPhone・iPad の充電がかなり不安定です。ワイヤレスイヤホンやモバイルバッテリーでは、このような症状は出ませんでしたが、通信機能を持つデバイスではアクセサリーとして誤認識することがあるようです。
また、充電途中にアクセサリーとして認識され、充電が途中で止まっているということもありました。
実際のデバイスでは 1A以上の出力を確認できず
これでは、充電器としての基本的な機能である「安定した充電」を期待することができず、逐一充電状況を確認しながら使用しなければなりません。
2つ目は、USB-A ポートの Quick Charge 3.0 についてです。本製品のパッケージには Quick Charge 3.0 において、9.1-12V/1.5Aに対応すると記載がありますが、実際には6.1-9V/2Aまでしか対応しておらず、9.1-12V/1.5Aに対応するのは Quick Charge 2.0 となります。
これは、景品表示法が定める優良誤認に当たる可能性が極めて高いものです。
また、Quick Charge を使用すると USB-A ポートからの出力が極めて不安定になり、頻繁にシャットダウンが行われていました。筆者は、Quick Charge 3.0 対応デバイスを所有していないため、実際のデバイスでどのように動作するかは未知数ですが、検証機材での動作状況を見る限り、あまり期待できるものではないかもしれません。(*1)
・総評
安かろう悪かろうの典型例。
本製品の完成度を一言で言い表すなら、これくらいかと思います。USB-C ポートだけをみれば危険な規格違反などはありませんし、普通の充電器だと思います。しかし、USB-A ポートの過電流保護機能が正常に動作していない点、不安定な充電性能は充電器としての基本性能を満たしているとはいえません。
また、セールスポイントにもなり得る、PPS が実装されているにも関わらず、言及が一切なされていない点、「デバイスを接続する」という簡単なチェックでわかる不具合を残したまま販売を行うというのは、メーカーとしてあまりにもお粗末なのではないかと思います。
とはいえ、¥700という価格を考えれば「致し方がない」という諦めの境地にあり、ある意味価格相応な製品と呼べるのかもしれません。
もはや、購入する理由すら見つからないレベルの製品ですので、同等製品が欲しい方は他社製品を購入するべきです。