みなさま、こんにちは。Kazuto Tanabe です。

今回も先週に引き続き、ダイソーの充電器をレビューします。この記事では、前回の USB-C&A 充電器をそのままシガーチャージャー化した製品をご紹介します。

基本的に、製品の内容としてはACアダプタを丸々移植したような製品ですので、相変わらずダメダメな製品となります。また、内容としても先週分の焼き回しとなりますので、あらかじめご承知おき下さい。

・開封

パッケージ

本体

シガーソケット差し込み部

USB-C と USB-A ポート

・規格違反品

本製品には、詳細を確認しなくともわかる規格違反が存在します。それは、USB-C と USB-A の出力が合計18Wという点です。

USB-PD 規格では、USB-C と USB-A の独立・分離実装を求めています。そのため、USB-C を使用中だからといって USB-A の出力が減る、その逆の A を使用中だからといって C の出力が減る。という仕様(CとAの回路を一緒にしてしまう)は、規格違反となります。

とはいえ、規格上そうなっている。というだけであり、実用上の問題があるのか?と言われれば「ほぼない」ため、あまり気にする必要はないかと思われます。

・本体の仕様をチェック

ここでは、充電器の仕様がどのようになっているかを確認します。検証では、12V/10A出力が可能なシガーソケットに接続しています。

Power Data Object(PDO)、USB-PD 以外の急速充電への対応の有無、過電流に対する保護機能の3点を確認し、安全上の問題がないか、景品表示法上の問題がないかを確認します。

確認の結果、パッケージに記載がある PDO と実際の PDO が一致していました。また、パッケージには一切記載はありませんでしたが、PPS にも対応するようです。PPS の実装方法には問題は見受けられませんでした。

なお、対応する急速充電に関しては USB-PD 充電器は USB-PD 以外の急速充電規格に対応することを禁じているガイドラインに反し、Quick Charge などへの対応が見られます。ただし、実装方法に問題は見受けられなかったため、安全性への影響はありません。

また、アナライザー上では22W充電器として認識されていますが、PPS 対応製品では数Wほど実際の数値よりも高く表示されることが多く、充電器側の問題ではないと推定されます。

次に、過電流に対する保護機能の動作状況を確認しました。

確認の結果、USB-C ポートの保護機能が動作するタイミングは公称値+0.5A程度であり、この程度であればしきい値として妥当なものであることから、保護機能は正常に動作するといえる状態にあります。

しかし、USB-A ポートは基本的な5V出力時にも関わらず最大3.5A(+1.1A)の出力が可能でした。本製品の USB-A ポートは Quick Charge 3.0 に対応しますが、このテストでは Quick Charge の出力は要求していません。

USB Battery Charge(USB-BC)では、最大3Aまでの出力を容認していますが、3Aを出力する場合は USB-C 端子の採用が必須となります。そのため、USB-A 端子にも関わらず 5V/3A 出力が可能である本製品は、USB の規格には沿わないものです。

ただし、デバイス側に完全な安全機能が備わっていれば、すぐさま重大事故に繋がるということはないと推定されます。なお、Quick Charge の出力を引き出すことはできませんでしたので、テスト結果は掲載していません。(後述/*1)

最後に各種デバイスで、USB-C ポートからの充電状況を確認しました。

確認に使用したのは、iPad 9、iPhone 14 Pro、iPhone SE(第2世代)で、高速充電が正常に充電が作動していることを確認できました。

・USB-A ポートがグダグダ(2回目)

本製品も、USB-A ポートが正常に機能しているとは言い難い状態となっています。

過電流保護のテスト結果でも触れましたが、それに関連するもの、それ以外にも問題点が見られました。

まず、1点目としてデバイス側で充電器ではなく USB アクセサリーとして認識される率が高く、iPhone・iPad の充電がかなり不安定です。ワイヤレスイヤホンやモバイルバッテリーでは、このような症状は出ませんでしたが、通信機能を持つデバイスではアクセサリーとして誤認識することがあるようです。

また、充電途中にアクセサリーとして認識され、充電が途中で止まっているということもありました。

実際のデバイスでは 1A以上の出力を確認できず

これでは、充電器としての基本的な機能である「安定した充電」を期待することができず、逐一充電状況を確認しながら使用しなければなりません。

2つ目は、USB-A ポートの Quick Charge 3.0 についてです。パッケージには Quick Charge 3.0 において、9.1-12V/1.5Aに対応すると記載がありますが、実際には6.1-9V/2Aまでしか対応しておらず、9.1-12V/1.5Aに対応するのは Quick Charge 2.0 となります。

これは、景品表示法が定める優良誤認に当たる可能性が極めて高いものです。

また、先述の通り、筆者のテスト環境では Quick Charge の出力を引き出すこと自体ができませんでした。ごく僅かな間だけ出力を引き出すことができますが、数十秒で強制シャットダウンしてしまいます。

筆者は、Quick Charge 3.0 対応デバイスを所有していないため、実際のデバイスでどのように動作するかは未知数ですが、検証機材での動作状況を見る限り、あまり期待できるものではないかもしれません。(*1)

・総評

あまりにお粗末すぎる。

本製品の完成度はこの程度です。先日のACアダプタよりも症状が悪化しているため、当然といえば当然の結果ですが、これが2022年に発売された製品だということが信じられません。USB-C ポートには大きな問題はありませんでしたが、USB-A ポートの惨状はもはや見るに耐えないものがあります。

製品としてかなり不安定で、既製品として流通していることが不思議でならない製品ではありますが、¥500という価格を考えればある意味価格相応ともいえるのかもしれません。

品質の悪い充電器はデバイスやケーブルを壊す原因となりますので、シガーチャージャーをお探しの方は他の製品を検討すべきです。

最終更新日:2023年10月25日

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