みなさま、こんにちは。Kazuto Tanabe です。

今回は、Appleが USB-C ケーブルや充電器に MFi認証を導入するかもしれないという話について、個人的に感じていることを書きたいと思います。

なお、このネタ自体がガセである可能性もありますので、記事の内容は話半分にとらえていただければと思います。

ことの発端

Apple が 今年発売する iPhone に USB-C を採用するかもしれない。

という噂話は、2020年以降、毎年のように言われ続け、当然のように実現することはありませんでした。

しかし、EUが域内で販売される多様なデバイスの充電端子を「USB-C に統一しなければならない」というルールを作ったため、Apple もなくなく Lightning を捨てざるを得なくなったことを同社の役員も認めています

EUの新ルールに遵守しようとした場合、最も合理的な採用時期は iPhone の発売時期からしても、今年2023年であるため、今年の iPhone には USB-C が採用されることが確定事項のようになっています。

怪しい話が登場する

iPhone USB-C 化の話で一番最初に出てきた情報は、転送速度は USB 2.0 に制限されるというものです。

これは、その後、廉価版の iPhone のみで、iPhone Pro シリーズはより速い転送速度になるだろうとされました。

そして、この話が出てからしばらくすると、「Apple が USB-C ケーブルに MFi認証を導入する」という話が出だしました。その話では、現行の Lightning ケーブルと同様の制度を iPhone を充電する USB-C ケーブルにも導入するというもので、MFi 認証を取得していない場合、充電速度や転送速度に制限がかかるというものです。

また、これを裏付けるように、Apple のサプライヤーが新しい MFi プログラム用のパーツの量産を開始したとの報道が登場し、iPhone に USB-C が採用されはするものの、汎用の USB-C ケーブルはまともに使えたもんじゃなくなるという認識が業界内で形成されました。

3月に入り充電器も

2023年の3月に入り、これまで USB-C ケーブルのみと思われていた MFi 導入の範囲が、充電器にまで及ぶ可能性が報道されました。

すなわち、2023年に登場する iPhone を従来通り、高速充電しようとすると、充電器とケーブル双方が MFi を取得した製品でなければならないということです。

現行の Lightning ケーブルは、ケーブルのみ MFi 認証を取得していれば良いため、充電器も MFi の対象となるという情報は、真偽は不明なものの、業界内にかなりの衝撃を与えました。

よくよく考えると…

Apple がケーブルのみならず、充電器も MFi の対象とする可能性にかなりの非難が集まっているように感じますが、よくよく考えると、MagSafe 1/2 では似たような仕様が採用されています。

最新は MagSafe 3

MagSafe は、2006年の MacWorld で MacBook シリーズへの搭載を目的として発表され、2006年の MacBook Pro より採用が開始されたものです。

採用期間は、2006〜2015年までとなっており、該当期間に MacBook を購入した方はもれなく MagSafe を使用されてきたと思います。

そして、知っている方は知っていると思いますが、この MagSafe 充電器にも Apple 純正品以外の互換品の販売が行われていました。これらの製品は、購入当初は使えるものの、ある程度の日数が経過したり、OS のアップデートがあると、使用できなくなるということがありました。

未だに売ってるんですね。互換品。

特に OS アップデートの直後に使用できなくなるという現象は、Apple が互換品を排除するために対策を行なったことが明確であり、昔から非純正充電器への対応は行なっていたといえます。

そのため、USB-C 充電器に MFi が導入されるという話は、過去の Apple の言動をみれば至極当然であり、むしろ今まで導入しなかったことが不思議なくらいです。

個人的にはとても嬉しい

話は変わりますが、昨年本誌でレビューした USB-C充電器は22製品でした。

あくまでもレビューされ、記事になっているだけの数ですので、もう少し本当は多いのですが、この22製品中、概ね問題ないと判断した製品は13製品となります。この数が多いのか少ないのかは不明ですが、裏を返せば2022年に発売され、本誌が観測した範囲内だけでも6製品は製品仕様に何らかの問題があったということになります。

本誌では、USB-C 関連製品のレビューには一定の基準を設けており、記事が作成される製品はまともなメーカーの製品に限られます。

世間一般に名が通るメーカーですら、怪しい製品をリリースしているのが USB-C 充電器界隈であり、製品の是非を決める USB-PD 規格自体も曖昧な箇所があり、あらゆるところがふわっとしています。

Thunderbolt 4 ケーブル

その中で、Thunderbolt に関しては、Intel が Thunderbolt 認証というものを実施しており、Thunderbolt ケーブルに関しては同社が製品試験を行い、規格への準拠を確認しています。そのため、Thunderbolt ケーブルを購入するときは、Intel の認証を取得した製品を選べば間違いはなく、複雑怪奇な USB-C 界隈においては非常に親切な対応といえます。

勘の良い方ならお気づきだと思いますが、Apple が USB-C ケーブルや充電器に MFi 認証を導入すると、安全で確実な製品を誰でも買いやすくなるというとても大きなメリットが生まれます。

現在の MFi 認証の姿を見ると、重要部品は Apple からの購入となりますし、設計についても概ね Apple の設計に従う必要があります。これが、USB-C ケーブルや充電器にも広がった場合、多くの製品が Apple が求める仕様を満たすこととなります。

これには、安全性や品質が伴い、現在市場流通する各メーカーごとに設計思想が異なり、カオスな状況となっている USB-C 製品を淘汰できるというメリットが生まれます。

そのため、筆者は Apple の USB-C への MFi 導入に肯定的で、仮に導入されるならば、本誌の取り扱い基準を MFi 認証取得品だけに限定したいとすら考えています。

過去製品との互換性をどう保つか

一連の話題の中で、過去製品との互換性や一貫性をどう保つのか?という声を耳にします。

要は、現行の iPad や MacBook は USB-C を採用するものの、MFi 認証の対象とはなっておらず、仮に MFi が導入された場合、MFi 取得製品との互換性が担保されるのかや、一貫性が歪んでしまうという話です。

iPad 10 の USB-C ポート

これについては、MFi 認証制度に下位互換を定義すれば良いだけですし、そもそも MFi が付くとはいえ、ベースは USB-C であるため、その他の機器に使用できないという方がおかしいでしょう。

また、Apple はソフトウェア・アップデートでハードの問題を誤魔化すこともあるくらい、ソフトウェア開発に力を入れているため、将来のアップデートで既に販売されたデバイスに関しても MFi 対応する可能性すらあります。

互換性の問題に関しては、設計段階でどうとでもなる問題ですし、一貫性という問題に関してもアップデートで対応できる可能性があります。もっとも、Apple に一貫性があれば、廃止した SDカードスロットや MagSafe を復活させるということはないと思いますが。

悲観する要素は何もない

Apple が USB-C アクセサリーに MFi を導入するという話題は、かなり悲観的に捉えられているように感じます。

もっとも、これまでのアクセサリーが全く使えなくなる、iPhone と Android で別々の USB-C ケーブルを持ち運ぶ必要があるなどの問題が生じることは十分に考えられ、これに対する危機感が今回の話題を悲観的に捉える人が多い理由でしょう。

しかし、USB-C アクセサリーの安全性向上という観点に関しては、期待できる部分があり、現在の混沌を極める市場が是正される可能性があります。

iPhone への USB-C 搭載と USB-C MFi認証開始に合わせ、ユーザーは既存のよくわからない製品を処分し、より安全で最適な充電器に置き換える機会を得ることができます。また、安価な製品にありがちな安全機能を削った製品が流通するという機会も大幅に減少することも期待できます。

そのため、筆者は今回の話題を目にしたとき、「長年 USB-C アクセサリが抱えてきた問題が解決されるのか…」と歓喜し、もう USB-C 充電器に悩まされなくて良いという安堵感すらありました。

「たかだか、スマートフォンやノートパソコンの充電器で何を言ってるんだコイツは」といわれそうな話ではありますが、筆者は USB-C アクセサリに悩まされ、頭を抱えてきました。かれこれ7年近くの悩みがなくなるのは、これ以上にない幸せです。

また、安全機能や仕様確認を毎回行ってきた本誌にも、ようやく平穏な世が訪れ、成仏できそうです。

ですので、今回の件にはあまり文句をいわず、良い機会だと思い、快く受け入れることが全てのユーザーのためで、私が地獄の底から戻ってくることもありません。

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