みなさま、こんにちは。Kazuto Tanabe です。

今回は、現代人の必需品「モバイルバッテリー」についての比較レビューです。
本記事で比較対象として使用するのは、「Anker PowerCore 10000」と「cheero Power Plus 3 10050mAh」の2機種です。

両製品とも、とても良い製品で「Amazonでモバイルバッテリーを買う時にどちらにするか最後まで悩む2択」とまで言われる程、ガジェット界隈では「最難解」との呼び声が高い問題です。

今回はこの極めて難しい問題を、これまで数多くのメーカーのあらゆるモバイルバッテリーを見てきた筆者が決着させます。当然ですが、本記事も一切の忖度ナシの「ガチレビュー」ですので、消費者利益を最優先し、双方にとって都合の悪いことでもバンバン書いていきます。

それでは早速、比較していきます。

・10,000mAhクラスのモバブの実力とは?

まず、「Anker PowerCore 10000」と「cheero Power Plus 3 10050mAh」を比較する前に、一般的な10,000mAh(ミリアンペアアワー)のモバイルバッテリーの実力についてご紹介しておきます。

10,000mAhのモバイルバッテリーを利用して、端末を充電できる回数は端末に内蔵されているバッテリーの容量によって異なり、Apple製デバイスを例に挙げると以下のようになります。

「iPhone XS」約3回
「iPhone XS Max」約2.5回
「iPhone 8」約4回
「iPhone SE」約4.5回
「iPad Pro 12.9」約0.8回
「iPad Pro 11」約1回
「iPad 9.7」約0.9回

近年、デバイスのバッテリー容量は引き上げ傾向が続いていますので、昔ほど10,000mAhのモバイルバッテリーは「大容量」とは言い難い時代になっています。

・いよいよ本番!Anker vs. cheero!

10,000mAhのモバイルバッテリーの実力がわかったところで、本記事の本題「Anker vs. cheero 問題」に入ります。
まずは、実機を用いないスペックシート上の仕様を比較します。

製品名Anker PowerCore 10000 cheero Power Plus 3 10050mAh
容量10,000mAh10,050mAh
本体重量約180g約192g
本体寸法92 x 60 x 22mm92 × 62 × 23mm
本体充電時間約5時間(2.4Aアダプタ使用時)約5時間30分(2.4Aアダプタ使用時)
出力情報DC 5V / 2.4A(PowerIQとVoltageBoost搭載)DC 5V / 2.4A(AUTO-IC機能付き)
入力情報DC 5V / 2.0A MicroUSBDC 5V / 2.0A MicroUSB
保証期間18ヶ月12ヶ月
特徴など世界最軽量(18年12月時点)本体素材に難燃性素材を使用

 

2製品のスペックは上記の通りとなり、スペックシート上ではAnkerがやや優勢なものの互角の戦いをしていると言えます。

・実機を画像で比較

まずは、両者を見た目で比較して「差」を確認していきます。

ほぼ同容量であるためサイズ感に大きな違いはありません。

端子類

フロントの端子類はその会社の設計思想が表れやすい部分で、AnkerはUSB-AポートとMicroUSBポートのみを配置。その反面、cheeroは電源ボタン、USB-A×2、MicroUSBポートを1箇所に集約。cheeroは1点集中、Ankerはデザイン重視の分散姿勢と言えそうな配置です。なお、Ankerは電源ボタンを左側面に配置しています。

一見すると、cheeroの方がUSB-Aポートが多く良さげに見えますが、2ポートの合計出力が2.4Aであるため、Ankerの1ポートから2.4A出力できる仕様とスペック上では大差はありません。しかし、iPhoneの2台同時充電くらいならば余裕にこなせますので、出力が半分になっても同時充電の需要がある人にはcheeroの思想が合うかもしれません。

ボディーサイズはAnkerの方が僅かに小さい

・性能的にはAnkerがやや上

ほぼ同じサイズの両者ですが、上記以外にも設計思想の違いが如実に露見している部分があります。
詳しいデータは個別記事を確認していただくとして、両社の特徴をザックリ書くと

Ankerは「算段的な制御を行い最高スペックを出す」

cheeroは「基本的に良いと言われるルールに則る設計」

が行われていると言えます。
まず、前提条件として両社の製品に規格に準拠しない仕様や、重大事故に繋がる欠陥は認められません。

その上で、Ankerは一般的に良いとされる出力電圧の一定化をあえて行わず、0.2V程度の昇降を一定間隔で行い発熱を減らす仕様を採用しています。それに対し、cheeroは出力電圧の一定化を行いバッテリー残量がなくなるまで安定したV数を出す仕様となっています。

この仕様の差が如実に表れているのが「実効容量の差」と「使用中の発熱量の違い」です。

モバイルバッテリーは10,000mAhの容量があるからといって、全ての容量を使えるわけではありません。詳細は割愛しますが、約2割〜3割程度の変換ロスが発生し10,000mAhであれば実際に使える容量は8,000mAh程度になります。この実際に使える容量のことを「実効容量」と呼びます。

その実効容量がAnkerは8,376mAh(-16.2%)、cheeroが8,101mAh(-19.4%)となっており、両者共変換ロス値標準ラインの -20% を上回る結果となっていますが、Ankerが3.4%cheeroよりも使える容量が多くなっています。

この差は、Ankerが電圧を意図的に昇降させる仕様を採用し、本体の発熱を最小限に抑え、変換ロスを最小限に抑える工夫が功を奏した結果だと言えます。当然、発熱が少ないため使用中に本体を触ると、Ankerよりもcheeroの方が温かくなります。

モバイルバッテリーの設計に具体的な規格が存在するという訳ではありませんが、Ankerの設計思想の方がモバイルバッテリーにとっては理想的で、cheeroの設計思想はやや古いとも言えます。

・使用感もAnkerが上

いくら、スペックが良くとも使用感が伴わなければ意味がありません。
しかしながら、使用感もcheeroよりもAnkerの方が優れていると私は感じました。

その根拠として「微電流感知」「充電完了時の挙動」を挙げておきます。

Ankerには本体にケーブルを接続しデバイスを接続すると自動的にデバイスの充電が開始される機能がありますが、cheeroには本機能はありません。また、Ankerは充電に大きな電力を必要としないBluetoothイヤホンなどの充電にも対応していますが、微電流感知機能がないcheeroではこれらのデバイスを充電することができません。

また、本体充電後の挙動に関してもAnkerは本体充電完了後にインジケーターを消灯させるのに対し、cheeroは常時点灯となります。両社の製品とも充電完了後の過充電防止機能を搭載しているため、cheeroが過充電を行なっているという訳ではありませんが、充電中にインジケーターが点滅するため、視覚的に充電が完了したことがわかりやすいのはインジケーターが消灯するAnkerのように感じています。

どちらも小さな仕様の違いですが、個人的にはAnkerの方が親切な設計思想だと感じています。

・特別な理由がない限りAnkerが無難な選択

両社のモバイルバッテリーとも、良い製品であることに変わりはありません。

しかしながら、僅かにAnkerの方が良い点が多く「Anker PowerCore 10000」と「cheero Power Plus 3 10050mAh」の2択であれば、Anker PowerCore 10000を選ぶ方が無難だと考えます。

先述の通り、Anker PowerCore 10000にはcheero Power Plus 3 10050mAhにはない微電流感知機能があり、充電できるデバイスの幅が後者より広いですし、重量や実効容量においてもcheeroよりも優れる結果となっています。但し、デバイスの2台同時充電はできませんので、その需要がある方は必然的にcheeroを選ぶことになるかと思います。

今回は総合的にAnkerの勝ちと言える結果となりましたが、cheeroにも微電流感知機能を搭載した製品がありますので、今回比較した2機種だけで安易に「cheeroよりもAnkerの方が良い」というメーカー(会社)の実力を判断することは控えていただければと思います。

また、10,000mAhのモバイルバッテリーを出しているのはこの2社だけではありませんので、他にもより良い選択肢があるかもしれません。あくまでも本記事は「Anker PowerCore 10000」と「cheero Power Plus 3 10050mAh」の2択で悩んでいる人に向けた記事ですので、その点もご承知いただければと思います。

最終更新日:2021年3月24日