みなさま、こんにちは。Kazuto Tanabe です。

今回は、以前よりご要望の多かった SHURE SE846 のレビューをお届けします。
但し、SE846 自体約2年前に購入したものになりますので、本記事は長期使用レポートとしてお届けします。

・そもそも SHURE SE846とは?

この記事をご覧の多くの方は、SHURE SE846 がどのようなイヤホンかはご存知かもしれませんが、レビューにあたり軽くご紹介しておきます。

本イヤホンは、アメリカのオーディオ機器メーカー SHURE が販売するハイエンドイヤホンで、大抵の場合スタジオモニター用のイヤホンとして扱われる製品です。モニター用製品は原音に忠実な音を提供することが必須条件となる分野の製品で、作曲者などが音楽を作る際などに使用されるものです。

SHURE のホームページ上では、『オーディオファンに捧げる渾身作。優れた互換性を持つ4基のカスタムドライバーを搭載し、これまでにない最先端のサウンドを実現した高性能イヤホン。サウンドシグネチャーを自由にカスタマイズでき、最高にバランスの取れた、温かみのあるクリアなサウンドを楽しめます。洗練された耳をもつオーディオファンにふさわしいイヤホンです。』と、ハイエンドであることが強調されている製品です。

・SE846 を選んだワケ

筆者が、ハイエンドイヤホンを購入するにあたり、SHURE SE846 を選択した理由について、価格が価格なだけに多くの人から質問を受けてきました。

その中で一貫して伝えている選定理由は「中田ヤスタカ氏が愛用するイヤホンであるから」というものです。

これは、それ以上それ以下の理由はない程、私が SHURE SE846 を選んだ最たる理由であり、逆に他のハイエンドイヤホンを購入の選択肢に入れさせない程、強力なものでした。

筆者は CAPSULE や Perfume など中田ヤスタカ氏が作る音楽(通称:中田サウンド)の沼にどっぷりハマっている人間で、これらの楽曲が綺麗に再生できれば何の不満もありません。ですが、どうせなら作っている側の人間が聴いている音と限りなく同じ音で楽曲を楽しみたい。と思うのが人間の性です。

そこで、同氏の機材を調べ、SHURE SE 846 であることがわかったため、何の躊躇もなく購入に踏み切った。というのが私がこのイヤホンを選んだ理由です。

・音質について

ハイエンドイヤホンはどんな音質を持っているのか?どんな素晴らしい世界があるのか?
など、SHURE SE846 の音質について期待が膨らんでいる方は多いと思います。

しかしながら、先述の通り本製品は「スタジオモニター用イヤホン」であり、どこまでも原音に忠実な音の再生を追求して作られたものです。その為、「世界が変わる程の高音質」「聴いたこともないような素晴らしい音」が広がっている訳ではありません。

SHURE SE846 が提供する音は、「あたかもアーティストが目の前で歌っているかのような音」「まるでコンサートホールで生演奏を聴いているかのような音」です。はじめて使用した時は「あれ?こんなもの?」と拍子抜けしてしまった程、悪くいえば「特徴のない音」ですが、それが SHURE SE846 の本質でありプロからも信頼される所以でもあります。

どこまでも忠実に、ナチュラルに美しく、心地よい音を出す。どの音域でも不快な音が一切存在しない。CD、デジタル配信、ストリーミングの音を聴き分けられる。使用環境に音質が大きく左右される下手な環境で使用すると、どこまでもとんでもない音が出る。エピソードを挙げればキリがありませんが、SHURE SE846 は非常にピュアなイヤホンだと感じています。

ふとした瞬間に「こんな場所でこの音質で音を聴けるって凄い!」と思わされたことも多々ありました。ノイズが多い飛行機の中、街中などでも「最高にナチュラルな音」を楽しむことができます。そして、本当に良い音は「心地の良い音」であるということを学ばされました。

・高音質ゆえの弊害も

筆者は過去に様々なオーディオ製品を購入し、いくつかの製品はレビューもしています。
その中でも、SHURE SE846 は群を抜いて品質の高い製品です。しかしながら、その品質の高さに端を発する弊害もあります。

それは、「質の悪い音を耳が受け付けなくなる」というもの。

これは、本製品の音が良いからこそ起こる問題ですが、レストランのBGM、駅のアナウンスなど普段何気なく耳にする環境音や、安価なオーディオ製品に不快感を覚えるようになります。あまりにも酷い場合でない限り、声に出してこの事実をいうことはありませんが、日常生活で聴く音にまで音質を求めるようになってしまったのは、あまり良いことではないと感じています。

・過渡期にこそリケーブルの真価が発揮される

これは、SHURE のイヤホンに共通していえることですが、本製品もリケーブルに対応しており、サードパーティ製ケーブルで音を調節したり、ワイヤレス化、Lightning 化、USB-C 化など、使用環境に応じて様々なケーブルを接続できる仕様になっています。

正直、購入時は「使わないかなぁ」と思っていたリケーブルの機能ですが、DAC に接続したり、iPhone に Lightning で接続したり、iPad Pro に USB-C 接続したりと、何かと端子が乱立している、さらには過渡期である今のタイミングでは、リケーブルできるメリットを「多様なデバイスで利用できる」という形で享受することになりました。

但し、頻繁にリケーブルを行うとケーブルの寿命を早めてしまう場合もあり、交換には細心の注意を払う必要があります。

・他の SHURE イヤホンと比較して

SHURE SE846 は SHURE の民生用イヤホンとしては最上位にあたるモデルです。
しかしながら、同社のイヤホンラインアップは1万円台の SHURE SE215 から存在し、SE846 に約10倍の価値や違いがあるのか疑問に思う方も多いと思います。

私もこれについては疑問に思っていたため、SE846 の音に慣れた頃に SE215、SE315、SE425、SE535 を借り、音質を SE846 と比較してみました。

その結果は以外なもので、価格帯的に最も SE846 に近い SE535 が最も似て非なる音質で、逆に最も安価な SE215 が SE846 の音に近いことがわかりました。また、SE425、SE315 についてもどちらかといえば SE535 寄りの音の作りとなっており、この3製品についてはフラットな音というよりも SHURE の味付けが強いイヤホンという印象を受けました。これについては、好みが別れる部分ですが、少なくとも私の好みではないことは確かでした。

なお、SE215 が SE846 に近いと書きましたが、あくまでも音の傾向が似ているだけであり、SE846 と比較すると二回り程度音質が下がる印象です。ただ、SE215、SE315、SE425、SE535 の中でどれを買うのか?と聞かれれば、私は SE215 を勧めます。

勿論、SE846 がベストバイであるという事実が揺らぐことはありません。

・記事公開から2年が経過

約2年前に購入したイヤホンの感想を書いてからさらに2年が経過した2022年においても、SE846 の優位性は健在です。

SHURE は、SE315/425/535 の後継として、AONIC 3/4/5 を世に送り出して久しくなりますが、現状でも SE846 の後継(AONIC 8?)はリリースされておらず、その声すらも聞こえてきません。同じく後継機種が出ていない SE215 と共に、現状でも最高傑作と呼べる状態であるとメーカーも考えているのか、はたまたフラッグシップの投入に慎重なのかは不明ですが、未だに SE846 は SHURE の最高峰として君臨しています。

事実、購入から4年経った今でも「これを超える音には出会ったことはない」と即答できるレベルで、私自身これ以上の音には巡り合えていませんし、これ以降(レビュー用はさておき)実使用を目的として1台もイヤホンを購入していません。

かれこれ、4年以上も同じイヤホンを使っていて全く不満がないどころか、日に日に好きになっていく。という体験は消耗品として扱われがちなガジェット界隈において、極めて異端な存在であり、耐久性を含めて、これ以上ない完成度だと確信しています。

・総評

イヤホンに10万円を使える人が世の中にどの程度いるのか。
これについては私の知るところではありませんが、もし SHURE SE846 に興味があるのであれば思い切って購入することをお勧めします。

下手に数万円のイヤホンを買い漁り、あーでもない。こーでもない。という時間的にも金銭的にも無駄な行為を省き、確実に最高のリスニング設備を手に入れることが出来ます。但し、音質は環境により左右されるため、新たに SHURE SE846 に最適な環境を作る。という沼にハマってしまう点は覚悟が必要です。

私からは、最高の逸品を求める人に贈る最高クラスのイヤホンとして、みなさまにご紹介させていただきました。

最終更新日:2023年8月30日

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