みなさま、こんにちは。Kazuto Tanabe です。
この記事では、スマートフォン、タブレット、ラップトップの充電器に書かれている2Aや20W、61Wなどの違いについて解説します。
・AとWの違いは主に表記方法の違い
例えば時速60kmで走っている1台の車を指差して、「速度を予想して」という質問を日本人とアメリカ人に同時にするとどうなるでしょうか?*1
日本人が「58km」、アメリカ人が「36mph」(マイル)と答えたとします。一見すると、2人は全く違う速度を予想した様に見えますが、時速58kmはマイルに換算すると36mphとなります。*2 すなわち、2人とも同じ数字を予想しています。
60kmという速度を当てられたかという問題は置いておいて、日本人の大半は「メートル法」で速度を予想し、アメリカ人は「ヤード・ポンド法」で速度を予想します。
ですが、走っている車の速度は不変であり、2人の予想も単位こそ違ど同じ速度です。それをどんな単位を使って表現するかによって受け取る印象が大きく変わることがお分かりいただけると思います。
一見すると全く異なる単位が使われている様に見える充電器に表記されているAとWも、実は速度表記と同じ様にどの単位を使って充電器の仕様を表記したかの違いしかなく、本質的には全く同じものを指しています。
例えば、2A(USB-A/5V)と10Wという表記は一見すると全く違うものの様に見え、何が違うのか、どちらが優れているのかを瞬時には判断することを難しくしています。ですが、どちらも本質的に扱える電気量は同じで、どの単位を利用して充電器の仕様を表示しているかの違いしかありません。(変換方法は後述)
AもW数も共に、充電器が流すことのできる電気量を表す単位であり、A(アンペアアワー)と W(ワット)と読み、これらの数字が大きくなればなるほど大きな電気量を流せます。大きな電気量が流せる充電器ほど、デバイスの充電時間を短くできるというメリットがあります。
*1 本稿では便宜上、メートル法を利用する人を「日本人」、ヤード・ポンド法を利用する人を「アメリカ人」としましたが、両単位共、世界各国で広く利用されており、単位基準を利用する人種を区別するものではありません。
*2 使用したマイル表記は小数点第1位以下を省いています。
・A表記はW表記に変換できる
速度の単位である kmh と mph が相互変換できる様に、A と W も相互変換することができます。
例えば、5V/2.4A と表記されているものをW表記に変換するには、V×A を計算することで W 表記に変換できます。今回の場合であれば、5×2.4=12 となりますので、2.4A=12W ということになります。その逆であれば、W÷V で 12÷5=2.4 となります。
この変換を行うことで、A 表記の充電器と W 表記の充電器を比べやすくなりますので、スペックを比べる際に活用してみて下さい。
・実は…
ここまで、A と W の意味や違い、変換方法をご紹介してきました。
ここまで読んでいただいた方は、「充電アクセサリーのスペックを比較する時は、AをWに変換すればわかりやすいんだー」となっているかと思いますが、実は A と W は暗黙の了解の使い分けが存在し、さほど変換が必要になるケースはありません。
その暗黙の了解とは、USB Power Delivery(USB-PD)に対応したアクセサリーは W 表示を使う、USB Battery Charge(USB-BC)にしか対応しないアクセサリーは A 表示を使うというものです。
USB-C 端子(右)と USB-A 端子(左)
USB-PD は USB-C 端子を利用した急速充電規格で、有名なところでいうと MacBook シリーズの端子、ACアダプタに採用されているものです。USB-BC は USB-A 端子を利用して電力供給行う規格で、USB と言われると多くの人が想像する端子が用いられています。
簡単に言い換えると、MacBook や iPhone の高速充電用など、USB-C デバイスの充電アクセサリーを選ぶ際は W 表記のもの、モバイルバッテリーや既存のデバイスの充電用を選ぶ時は A 表記のものと覚えておくと良いかもしれません。
なお、あくまでもこれは暗黙の了解であり、近年では USB-PD の表記と統一するために USB-BC 製品でも W 表記を行っている場合もありますので、あくまでも参考程度とお考えください。
・USB-PD 充電器を選んでおけば良い?
A や W など、使うデバイスによって充電器を分けたり、深く考えるのが面倒だと感じる方はとりあえず USB-PD 充電器を買ってしまうというのも良いかもしれません。
USB-PD 充電器には下位互換性があり、既存の USB-A 充電器と同様の機能を有しています。そのため、USB-C ケーブルさえ用意してしまえば、デバイスが USB-PD に対応していなかろうが、デバイス充電用端子が USB-C でなかろうが、とりあえずは充電することができます。
また、長期的に見れば、将来的にさらに多くのデバイスが USB-PD に対応すると考えられるため、とりあえず1台くらいは持っていても損はないと思います。
本誌では、充電技術に関する様々な話題を取り扱っていますので、その他に気になることがある方は合わせてご覧いただければと思います。
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