みなさま、こんにちは。Kazuto Tanabe です。

今回は、Anker PowerCore III Fusion 5000 をレビューします。本製品は、Anker PowerCore Fusion 5000 の後継モデルで、本体に最大18W出力が可能な USB-C ポートを新たに備えたモバイルバッテリーとACアダプターを兼ねた製品です。

・フォトレビュー

内容物は本体、ポーチ、取扱説明書

本体にはバッテリー残量インジケータ一体型電源ボタン、USB-C ポート(5V/3A,9V/2A)、USB-A ポート(5V/2.4A)が配置。

プラグは折りたたみ式

プラグは取り外すことができる。
海外対応の為と思われるが、プラグの単独販売はない為現状では無用の長物と化している。

前モデルと比較すると、本体サイズはひと回り大きくなっているが重量は13g(176g)軽くなっている。

プラグが本体の高い位置にある為、2口タイプのコンセントであれば干渉はしない。

・動作検証

ここでは、USB-C ポートの Power Data Object(PDO)と USB-PD 以外の急速充電への対応の有無、過電圧に対する保護機能の3点を確認しました。

PDO は表記よりも大きい値の場合、デバイスを破損させる恐れがあり、小さい場合は景品表示法上の問題が生じます。また、USB- PD 規格では USB-PD 以外の急速充電への対応を禁止しています。過電流に対する保護機能は、異常発熱・出火などを防ぐ目的の保安機能として実装されています。

問題のある製品の場合、主にこのいずれかのポイントで問題点が露見するため、本誌ではこの3つの検証結果を主に使用しています。

 

検証の結果、PDO は製品本体の記載や販売ページに記載されているものと一致していました。USB-PD 以外の急速充電への対応は、Quick Charge 3.0 への対応が確認できました。また、過電流保護に関しては特に問題は見受けられませんでした。

なお、USB-PD 以外の急速充電規格への対応は、USB-PD の規格に沿わないもので、本来であれば規格違反に該当する仕様となります。しかし別検証で、Quick Charge 使用中でも規定外の電力供給は行われていないことを確認しており、Quick Charge が原因の使用上、保安上の問題が発生することは極めて低いと考えられます。

なお、USB-A ポートに関しては USB-BC 1.2、Samsung 2.0A、Apple 2.4A に対応しており、様々なデバイスの充電に最適化されています。また、過電流保護についても表記通りであることを確認できました。

次に、モバイルバッテリーとしての性能について検証した結果をご紹介します。

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本製品のバッテリー容量は、4,850mAhとなっています。それに対し、実際に有効に使用できる容量である実行容量は14.78Wh(約3,995mAh)となりました。これは、表記容量の82.37%に値し、効率の良いモバイルバッテリーはこの数値が80%以上であることから、本製品はエネルギー変換効率に優れた製品だといえます。

なお、本製品は100Wh以下のバッテリー容量であるため、手荷物に限り航空機への持ち込みが可能です。

・一見便利そうに見えるが…

本製品はモバイルバッテリーと AC アダプターが一体型となった製品です。
この2つが1つの製品となっているため、一見すると便利そうに見えますが仕様を見るとかなりイマイチな仕上がりとなっています。

まず、兎にも角にも「充電速度が致命的に遅い」という問題は本製品最大の欠点といえます。Anker の発表によれば、本体充電時間は約2時間40分となっています。この数値は、モバイルバッテリーとしては一般的な充電時間のように見えますが、近頃の中容量モバイルバッテリーであれば1.5〜2時間程度で充電を完了させることができます。

また、本体の出力についても、USB-C ポートと USB-A ポートを同時に利用すると、合計の出力が15Wに制限されます。そのため、2ポート同時使用の場合、充電速度は1ポートで使用した場合と比較してかなりの低下となります。

・総評

使う人を選ぶ。少なくとも私はターゲットとされている人間ではない。そう感じました。

先代の製品から改善の余地や時間はたくさんあったにも関わらず、イマイチパッとしない仕様が継続されていたり、充電系統がコンセントのみとなった点は明確なスペックダウンです。また、安全性に問題はありませんが、USB-C ポートが Quick Charge に対応している点も、USB-PD の規格からは外れています。

本製品の狙うところは、どんな形でも荷物を減らしたい層や予備のバッテリーを購入しておきたいという層だと思います。ですので、ご自身が本製品の仕様に満足できそうならば、本製品を選んでも良いのではないでしょうか。

最終更新日:2023年8月30日