みなさま、こんにちは。Kazuto Tanabe です。

今回は、エレコムより販売が開始されたモバイルバッテリー EC-C23LBK をレビューします。

開封

パッケージ

内容物は本体と説明書類

本体

電源ボタンは右側面上部に配置

本体ポートは USB-C*2とUSB-A

バッテリー残量は%表示が可能

一般的な10,000mAhのモバブとの比較

iPhone 15 Pro との比較

災害時用に

モバイルバッテリーというと、従来までは日々持ち歩くものでしたが、近年の iPhone は省電力性能が向上し、これが不要になっています。

また、これは Apple Silicon により大幅な省電力性能を得た MacBook Air にも言え、日常生活においてモバイルバッテリーは不要な時代になっています。

しかし、災害時や電源の確保が長期間難しい環境下では、その価値は引き続き遺憾無く発揮し、今回筆者がわざわざモバイルバッテリーを買い換えたのも災害時の備えとしての側面が大きく、日常使いは想定していません。

本体の仕様をチェック

USB-C ポートの Power Data Object(PDO)と USB-PD 以外の急速充電への対応の有無、各ポートの過電流に対する保護機能を確認しました。

確認の結果、メーカーが提供する PDO と実際の PDO が一致していることを確認できました。

なお、本製品は USB-PD 以外の急速充電規格に対応しており、厳密に言えばこれは規格違反に当たるものですが、近年ではこの仕様が一般的かつ、安全に他の急速充電規格を実装することができるため、安全性の問題はありません。

次に、過電流に対する保護機能の動作状況を確認しました。

過電流に対する保護機能は、異常発熱・出火などを防ぐ目的の保安機能として充電器には必要不可欠なものです。

確認の結果、過電流保護機能はいずれも+0.5A~0.9A程度で動作することが確認でき、保護機能として有用に動作することを確認できました。

ただし、過電流保護機能の動作しきい値として+0.9Aはやや高い数値であり、理想をいえば+0.5A程度で動作することが好ましいと考えます。

最後に、各種デバイスへの給電状況をチェッカーを使用して確認します。

確認に使用したデバイスは、MacBook Air with M2、iPad Air 6、iPhone 15 Pro の3機種で、MacBook Air で通常速度での充電、その他のデバイスで高速充電が動作していることを確認できました。

モバイルバッテリーとしての性能

次は、モバイルバッテリーとしての性能を確認します。

一般的にモバイルバッテリーの表記容量は、その全てを充電に使用できるわけではなく、発熱や電圧の調節により一定のロスが生まれます。このロス率が20%程度である製品は、モバイルバッテリーとして性能が高い製品と呼べます。

本製品のバッテリー容量の表記は、10,000mAh(36.5Wh)となっています。それに対し、実際に有効に使用できる容量である実効容量は28.27Wh(約7,641mAh)となりました。

これは、表記容量の76.41%に値し、効率の良いモバイルバッテリーはこの数値が80%以上であることから、本製品はエネルギー変換効率に劣った製品だといえます。

なお、本製品は100Wh以下のバッテリー容量であるため、手荷物に限り航空機への持ち込みが可能です。

使用感

本製品は、最大30Wの USB-PD 出力が可能なモバイルバッテリーです。

しかし、それは1ポート使用時に限られた話であり、他のポートとの併用時には合計最大15Wとなります。これについては、「改善するか1ポートの充電器にして欲しい」と筆者は感じてしまいますが、そう感じる人は1ポートしか使わないでしょうし、3ポートに惹かれる人は滅多と30W出力の恩恵を受けることはないであろうことを考えると、上手くバランスが取れた製品といえるかもしれません。

また、本製品は出入力中に、本体の%表示ディスプレイの横にあるグリーンのランプが点灯する仕様となっています。これは記述通り、出入力中のいずれでも点灯してしまうため、本体からの出力中なのか、本体充電中なのかの区別をつきにくくしています。

iPhone と iPad では、これらのデバイスからモバイルバッテリーへ給電してしまうということがないことは確認していますが、全てのデバイスでこの挙動となるかは未知数です。そのようなデバイスでも異常が瞬時にわかるという観点から、入力と出力のランプの色は分けるべきであったように思います。

総評

ギリギリ及第点には届いていない。

本製品の完成度を一言で言い表すなら、こうなります。

筆者は24年6月時点で販売されている30W出力が可能なモバイルバッテリーを全て検証しましたが、いずれも製品としての品質が著しく低く、記事化の基準にも届かない製品しか存在しませんでした。

その中で唯一、記事化のラインに届いた本製品は他の製品よりはマシと言えるでしょうが、モバイルバッテリーとして最も重要な電力効率はやや物足りないものがあり、個人的には満足できる性能とはいえません。

次期 iPhone が、40W充電に対応するのではないかとの情報もあり、30Wの必要性がまもなく薄れてしまうそうなタイミングも相まって、あまり積極的に購入を推奨できるものではありません。

最終更新日:2024年7月16日