みなさま、こんにちは。Kazuto Tanabe です。
今やスマートフォンやタブレットの充電に必須ともいえる USB-PD 充電器。みなさまはどんな製品を使っていますか?私の近頃の流行りは複数ポートの USB-PD 充電器です。1つの充電器で2つ以上のデバイスを充電できるため、自宅はもちろんのこと出先でも非常に重宝します。
今回は、そんな複数ポートの USB-PD 充電器の新製品 エレコム MPA-ACCP25WH をレビューします。これといった製品名がない辺り、「日本企業だなー」と感じさせられる本製品の実力を見ていきます。
・開封
パッケージ
本体
最大20W出力ができる USB-C ポートが2つ。その下は通電インジケーター。
5V/3A と 9V/2.22A に対応(240V対応なので海外でも使えます)
プラグは折り畳み式
・充電器の仕様をチェック
ここでは、USB-C ポートの Power Data Object(PDO)と USB-PD 以外の急速充電への対応の有無、過電流に対する保護機能の3点を確認しました。
PDO は表記よりも大きい値の場合、デバイスを過電流により破損させる恐れがあり、小さい場合は景品表示法上の問題が生じます。また、USB- PD 規格では USB-PD 以外の急速充電への対応を禁止しています。過電流に対する保護機能は、異常発熱・出火などを防ぐ目的の保安機能として実装されています。
問題のある製品の場合、主にこのいずれかのポイントで問題点が露見するため、本誌ではこの3つの検証結果を主に使用しています。
確認の結果、両ポートともメーカーが提供する PDO と実際の PDO が一致しており、問題点は見当たりませんでした。
なお、本製品は20W出力が可能と謳われていますが実際のところは19.98W充電器であり、厳密にいえば20Wではありません。しかしこの仕様は20Wという数値を採用した Apple が発端で、各社が20W充電への対応のためにその仕様を踏襲していると言う状態ですので、エレコムだけがどうこう。と言う問題でもありません。
最後に、過電流に対する保護機能の動作状況を確認しました。本製品の仕様は、1ポート最大20W、2ポート使用時合計40Wとなっています。
確認の結果、大きな問題は認められず保護機能は正常に動作するといえる状態であることを確認できました。過電流保護が動作するしきい値がやや大きいように感じますが、2ポート製品はこの傾向にあるため内部構造的にある程度の余裕を持った作りとなっていると考えられます。
・ところで Apple 2.4A 充電に対応しないけど?
USB-PD はその規格で USB-PD 以外の急速充電に対応することを禁止しています。しかしながら、その他の急速充電規格を安全な形で USB-PD 充電できることも技術的には可能で、多くのメーカーがその傾向にあります。
しかし本製品は、急速充電規格でお馴染みの Quick Charge はおろか Apple 2.4A にも対応していません。この場合、(数は減ってきましたが)高速充電に対応しない iPhone X 以前の iPhone などを充電した場合、1.5Aでの充電となり、2A充電器で充電するよりも充電速度が遅くなります。
4.9V/1.4A
実際に iPhone 7 で検証したところ、5V/1.5Aでの充電が最大となっており、Apple 2.4A 充電に対応する充電器と比較すると充電速度が遅くなります。ただし、0-100%までの充電時間で比較すると、バッテリー劣化抑制機能の影響で Apple 2.4A 対応の有無で充電時間に大きな差は出ないと考えられます。
・使用感
ここまできてようやくタイトル回収に入りますが、筆者はこの充電器を過去最高傑作なのではないか?と感じています。
その理由は、先日レビューした Anker 521 Charger (Nano Pro) と比較すると明らかです。
高さは Anker が小さいが…
エレコムはプラグが折り畳める
これまでに嫌ほどACアダプタの類を見てきましたが、プラグが折り畳めないACアダプタは総じて駄作(偏見)だと思っています。いくら筐体が小さくとも、プラグが折り畳めなければ持ち運びは敬遠しますし、コンセントに挿しっぱなしが前提となり、使用できるシーンがかなり限られてきます。
また、1ポート使用時40W、両ポート使用時20Wという動作をする Anker に対し、本製品は元から1ポートの出力は潔く半分の20W、2ポート合計で40Wとしています。これは、モバイルデバイスを充電するには最適な設計であり、接続するデバイスに応じて「今の出力はこうなっているからこのデバイスは充電できて…こっちはできない…」とならず、無意識に使っても不利益を被ることがありません。
・30W時代の到来により…
本製品は、2021年に販売が開始された製品であり、当時としては十分な出力性能を有していましたが、2023年11月現在においては、そうはいえません。
既に、iPhone や iPad の最大入力W数は20Wを超えており、本製品を使用しての最速充電はできなくなっています。また、30W+30Wの出力ができる製品も登場しており、昨今の基準からすれば、スペック的にやや厳しいといえます。
やや大型化するので一長一短ではある
そのため、2023年になっての購入はあまり推奨できず、今後のためにも他の製品を選ぶことをオススメします。
・総評
モバイルデバイス用の USB-C 充電器の傑作。(記事公開時の評価)
本稿執筆時点ではそういえる製品だと思います。充電器としてのバランスはもちろんのこと、ユーザーの利便性も十分に考慮された製品に仕上がっていると思います。
個人的に日本メーカーは、品質が安定しない、規格違反品を販売する、そもそもの性能が悪いなど敬遠していましたが、そのイメージを大きく変えるものでした。
モバイルデバイス用の USB-C 充電器を探している方は本製品も検討してみてはいかがでしょうか。