みなさま、こんにちは。Apple Watch を初代から使っている Kazuto Tanabe です。

先日、ふと気がついたことがあります。それは、「Apple Watch している人、ほとんどが SE ユーザー」ということ。

本誌の読者層では、「何いってんの?」「そんなわけない」「子供以外に持っている人なんか見たことないわ」という否定的な声が大多数な気がしますが、それは私たちの周辺が特異なだけであり、世間一般的な状態ではありません。

・そもそも Apple Watch SE とは?

色々という前に、まずは Apple Watch SE とはなんぞや?という話です。

本誌がリリース時に投稿した記事によると、Apple Watch Series 6 と同じ加速度計、ジャイロスコープ、常時オンの高度計を備えており、最新のモーションセンサーとマイクを使用して、落下検知、緊急SOS、国際緊急通話、ノイズアプリが利用可能なモデルであり、Apple Watch SE は、Series 3 より30%大きいRetinaディスプレイを特徴とし、S5 チップにより Series 3 よりも最大20%高速に動作することが謳われています。

簡単に言えば、その年の通常モデル Series 6 よりも古い Soc、および常時点灯ディスプレイを省き、価格を抑えた手頃(廉価版)な Apple Watch が SE です。

これは、iPhone SE(第2世代)が iPhone の廉価版として販売されていることを考えれば、SE という名称が廉価版であることは誰でも想像がつくわかりやすいネーミングだと思います。

さらに、2022年になり Apple Watch SE 2 が登場しました。

Apple Watch SE 2 は、同時に発表された Apple Watch Series 8 と同じく、衝突事故検出の検出機能が備わりました。

しかし、それ以外の機能は初代 Apple Watch SE と大差はなく、Apple Watch Series 8 と比べると20%小さいディスプレイ、皮膚温センサーなど、Series 8 が進化した分、SE の全く及ばない点が多く目立つようになりました。

・Apple Watch SE の存在意義

そもそも、Apple Watch SE はどのような経緯でリリースされた製品なのでしょうか。

Apple は、2020年の Apple Watch SE のリリースと同時に「ファミリー共有設定」を Apple Watch にも持ち込みました。この機能は、iPhone を持っていない家族(主に子供)に Apple Watch を渡し、見守りができるというものです。Apple はこの機能に最適な Apple Watch として、Apple Watch SE を世に送り出しています。

このスタンスは、2022年の Apple Watch SE 2 の発表の場でも変わることはありませんでした。

この機能の性質上、利用には「GPS モデル」ではなく、携帯電話通信ができる「Cellular モデル」の方が理想的であり、メインストリームの Apple Watch では高価になりがちな Cellular モデルを安価に提供するために SE は生まれてきたといえるでしょう。

事実、一般的に病気リスクの低い子供達に通常グレードの心電図機能や血中酸素濃度の測定機能、皮膚温センサーは不要であることから、Apple Watch 最大のセールスポイントであるヘルスケア機能はバッサリカット、ディスプレイも常時点灯非対応など、あらゆる機能が削られています。

しかし、この仕様でも子供達に持たせるには十分であり、見守り(ファミリー共有設定)のためのデバイスとしては完成されているともいえます。

・これをしている大人はなんなの?

ここまでの Apple Watch SE の仕様や登場の経緯を読めば、私が言いたいことは大体の予想がつくと思います。

「Apple Watch SE をしている大人は一体どういうことなのか?」

私から見ると、大人で Apple Watch SE を選択した人はどういう意図があるのか、いったい何がしたいのか全く検討がつきません。

その理由は先述の通りであり、様々な疾患リスクが年々高まり、健康に配慮しなければならない世代の人間が Apple Watch 最大のセールスポイントであり、数多くの命を救ってきたヘルスケア機能を無視する理由が全く理解できません。また、時間に縛られる現代人が「時計」として重宝する常時点灯ディスプレイを不要とする理由も検討がつきません。

現行モデルである Apple Watch Series 8 の GPS モデルは、最も安いモデルで¥59,800〜、Apple Watch SE は¥37,800〜と、2.2万円の差があるため「安価な Apple Watch」を求めて SE を選ぶ人が一定数いるものと思われます。

しかし、2.2万円で失う利便性や機能はかなり多く、それらを全て投げ打ってまで Apple Watch SE を買う行為になんの目的があるのか。甚だ疑問に感じています。

・Apple Watch をしていることに価値がある?

近年の Apple 製品の大衆化、そして「ブランド化」には目を見張るものがあります。

当たり前に iPhone を持ち、iPad が学校や職場で使われ…。という状況は熱狂的なファンから支持される「ニッチな会社」だった Apple を知る人間としては、不思議な感覚を覚えます。もちろん、筆者は Apple 製品の大衆化とブランド化により大きな利益を得ている株主の1人であるため、これに文句をいうつもりはありません。

しかし、年々進む Apple の「ブランド化」が大人も Apple Watch SE を買ってしまう1つの原因だと感じます。

というのも日本人は、「なんか最近、Apple Watch をしている人が増えたな…。流行っているなら私も買わないと!」という、自身の周りに漂う「なんとなくの空気感」に非常に敏感な国民性です。そのため、Apple 信者たちがアホみたいに布教して「ノリで買った」「プレゼントした」などの理由で、装着する人口が増えてくると、あたかもそれが「流行している」と勘違いしてしまうのです。

Apple Watch Hermès

その結果、「私も買わないと!!」とは思うものの、「使うかどうかわからない時計に6万円はなぁ…。アレ!?ちょっと安い Apple Watch もあるじゃん!これにしよ!」という結末を迎えます。もっとも、高いモデルを見させた上で、少し安い下位グレードの製品を見せる。というのは Apple の長年の常套手段であるため、策にモロに引っ掛かっています。

結局のところ、「Apple Watch をしている」ということがステータスになってしまったために、いくら優れた機能があろうともそれらには目もくれず、安い Apple Watch SE になってしまう。という残念な結果になっている感は否めません。

・軌道修正

Apple Watch SE をオススメしない理由を説明する記事がいつの間にか、Apple Watch SE ユーザーの闇を暴き、傷口に塩を塗る内容になっていますが、別に本記事はそういう目的で作成している訳ではありません。

というのも、Apple Watch を勧める人間の中に一定数存在する「Apple Watch SE で十分論者」がどういう人なのかを説明するために、あるあるをご紹介しました。すなわち、彼らは Apple Watch をそれほど使わないライトユーザーであり、機能を考慮して勧めている訳ではなく、価格でしか物事を捉えていないので注意が必要。ということが言いたいのです。

Apple Watch の真価は「優れたヘルスケア機能」が存在し、ユーザーの健康リスクを通知してこそ、その真価が発揮されるものであり、「所有しているだけ、着用しているだけ」ではなんの価値もありません

・考え方は人それぞれ

私は Apple Watch SE を大人がする意味を理解することができない人間です。

だからといって、その価値観を人様に押し付けようとは全く思いません。あくまでも私が「そう感じる理由」をご紹介し、購入の参考になれば良いかな。という程でこの記事を書きました。ですので、この記事で中途半端な知識をつけて「マウント合戦を始める」という分断を生むようなことは望んでいません。

私にとって最も大切なことは、「Apple Watch の価値を高める」ことです。現状では、なんでもかんでも SE をまずは勧めるという世論が出来上がっており、これでは Apple Watch での体験、価値というものが低くみられてしまいます。

それでは販売金額も低いですし、必要性を感じず「買い替え需要」が生まれない原因になります。これは、株主にとって最も困る事案であり、なんとしてでも避けなければならないため本記事を書きました。

・ところでお前は?

おいおい。最後に銭ゲバが出たよ。勘弁しろよ。と思っている方もいると思います。

それと同時に、そこまでいうお前は何を使っているんだ?という話になると思いますが、私は Apple Watch Series 7 の一番安いモデルを使っています。上位モデルを買ったとしても、毎年買い換えるため、高価なモデルはあまり意味がないため、数年かけてこの結果にたどり着きました。

なお、Apple 製品というか、ガジェット全般に言えることですが、私は「消耗品」という認識しかなく、仕事道具でもありますので、愛着はあるものの「所有していること」などに別段何かを感じたりはしていません。逆に、今の Apple 製品のブランド化の意味が実はよくわかっていなかったりします。

最終更新日:2022年9月12日