みなさま、こんにちは。Kazuto Tanabe です。

読者の皆様は、どんなモバイルバッテリーをお使いでしょうか。筆者はモバイルバッテリーなんて過去の遺物だ。と言いながらも、2018年に購入した Anker PowerCore 10000 PD を必要な場合に使用しています。

しかし、これも購入からそろそろ4年を迎え、明らかに充電可能回数が減少しており、寿命を迎えてしまいました。

そのため、今春より様々なモバイルバッテリーの購入を検討し、実際に購入したりもしていましたが、規格違反や性能不足など、まともに使える代物に1台たりとも出会うことができませんでした。

今回は、新しいモバイルバッテリー探しの一環で購入した製品の1つである、シリコンパワーの C10QC をレビューします。

開封

パッケージ

内容物は本体、取扱説明書、充電用ケーブル(USB-C – C&A)

本体

出力ポートは、USB-A*2、USB-C、入力は USB-C の他 MicroUSB にも対応

電源ボタン

バッテリー残量インジケータは4段階

USB-PD もしくは Quick Charge 出力中は右端がグリーンに点灯

デザインに特大の難あり

本製品には、販売ページなどでは言及されていないデザイン性に関する特大の難点があります。

それは、下記の画像を見ていただければ一目瞭然ですが、本体の背面にビッシリと本体の仕様が印字されています。

えぇ…

通常、このような表記は本体の底部に行われることが多く、裏面にあるものに関してもここまでの大きさのものは見かけません。

Anker PowerCore 10000 の例

筆者はこれまでに数多くのモバイルバッテリーを見てきましたが、ここまで主張の激しい製品は初めてで、表面の落ち着いた白のデザインを台無しになってしまっています。

また、筆者が最も問題視しているのは、この事実がどこにも言及されていない点で、商品イメージなどは全て表面が使用されており、このような状態になっていることは製品を実際に手に取るまでわからなくなっています。

そういわれれば、同社製のSSDケースも派手に印字があった…

流石にこの事実を知っていれば、購入の候補にならなかったため、製品の全体像を消費者に明示する努力は必要かと思います。

本体の仕様をチェック

ここでは、USB-C ポートの Power Data Object(PDO)と USB-PD 以外の急速充電への対応の有無、各ポートの過電流に対する保護機能を確認しました。

問題のある製品の場合、主にこのいずれかのポイントで問題点が露呈するため、本誌ではこの3つの検証結果を主に使用しています。

確認の結果、メーカーが提供する PDO と実際の PDO が一致しておらず、USB-PD 規格上で禁止されている USB-PD 以外の急速充電規格への対応が確認できました。

製品に同梱されている取扱説明書には、USB-PD 出力において 5V/2A の出力が可能と記載されていますが、実際に通知された PDO では 5V/2.4A となっていました。また、根本的に USB-PD に対応する USB-C ポートは、5Vは3Aに対応しなければならないため、この仕様は規格違反となります。

これにより、デバイスの充電ができないといった、互換性の問題が一部で生じる可能性があります。

なお、USB-PD 以外の急速充電規格への対応は、近年では広く一般的に行われていることであり、安全な形で両者共存させることができ、本製品も保安上の問題は見受けられなかったため、使用上、何らかの問題が発生することはないと推定されます。

付属の USB-C ケーブルは、2本ともに規格に沿った安全なものであることが確認できました。

次に、過電流に対する保護機能の動作状況を確認しました。

過電流に対する保護機能は、異常発熱・出火などを防ぐ目的の保安機能として充電器には必要不可欠なものです。

確認の結果、USB-C & A 共に修正が望ましい点はあるものの、保護機能は有用に動作するといえる状態にあることを確認できました。

最後に、各種デバイスへの給電状況をチェッカーを使用して確認します。

確認に使用したデバイスは、iPad 10、iPad 9、iPhone 15 Pro、iPhone SE(第2世代)の4機種で、いずれも高速充電が動作していることを確認できました。

モバイルバッテリーとしての性能

次は、モバイルバッテリーとしての性能を確認します。

一般的にモバイルバッテリーの表記容量(本製品:10,000mAh)は、その全てを充電に使用できるわけではなく、発熱や電圧の調節により一定のロスが生まれます。このロス率が20%程度である製品は、モバイルバッテリーとして性能が高い製品と呼べます。

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本製品のバッテリー容量の表記は、10,000mAhとなっています。それに対し、実際に有効に使用できる容量である実効容量は31.28Wh(約8,454mAh)となりました。これは、表記容量の84.54%に値し、効率の良いモバイルバッテリーはこの数値が80%以上であることから、本製品はエネルギー変換効率に優れた製品だといえます。

しかしながら、12Wh(約3,243mAh)を経過した辺りから、V数の電圧降下が始まっており、出力開始当初は20W出力が可能であったものの、最終的には15W程度まで出力が低下してしまっています。

これにより、スマートフォンやタブレットの充電速度がモバイルバッテリーのバッテリー残量に左右されることとなり、バッテリー残量が多い時は充電が速いけど、残量が少ない時は充電が遅いという現象が発生します。

性能の高いモバイルバッテリーは、出力開始から終了までほぼ一定の電圧を保つことができるため、時間経過と共に電圧降下が発生する本製品は品質の高い製品とはいえません

なお、本製品は100Wh以下のバッテリー容量であるため、手荷物に限り航空機への持ち込みが可能です。

使用感

本製品の特筆すべき特徴は、USB-C と USB-A*2 の合計3ポートから同時に電力を供給できることでしょう。

近年の同クラスのモバイルバッテリーは、USB-C と USB-A ポートが1つずつという構成になっているものが多く、USB-A が2ポートあるというのは非常に珍しくなっています。

ちょうど良いサイズ

しかしながら、3ポート同時出力を行うと合計で5V/3A出力となってしまうため、USB-C ポートからの USB-PD 出力はおろか、USB-A の出力も1Aに制限されるなど、実用に耐え得るものではないため、常用は検討しないほうが良いでしょう。

重量は、10,000mAhのモバイルバッテリーとしては標準的な186g(実測)となっており、特段重い/軽いというわけではありません。

総評

買わなくて良い。

本製品の完成度を端的に表現するのであれば、これが最も相応しいと思います。先述の通り、デザイン性の破綻とそれを開示しない姿勢、安全性の問題は認められないものの、近年のモバイルバッテリーとしては性能が低いこと、互換性に関わる規格違反が存在する点を鑑みれば、納得できるものだと思います。

しかし、冒頭でも触れた通り、現在市場流通している多くのモバイルバッテリーが本製品と同等レベルのクオリティでしかなく、いってしまえば平均的な製品ともいえます。

市場平均について、詳細をこの場で言及することは避けますが、類似製品の中では安価な部類に入る点は、まだ良心的といえるかもしれません。