みなさま、こんにちは。Kazuto Tanabe です。
この記事では、USB-PD におけるW数の違いと適切なW数の選び方をご紹介します。
なお、本稿はみなさまにわかりやすく内容を理解していただく目的で作成しておりますので、詳細などを省略している場合もあります。その点についてはご容赦下さい。
・そもそも USB-PD とは?
USB-PD とは USB Power Delivery の略で、USB を使った電力供給を実現している最新の規格です。
USB-PD は最大100Wまでの電流を扱え、より高速にデバイスを充電できるなど従来の USB を使った電力供給規格よりも優れた性能を発揮します。近年では、様々なラップトップやスマートフォン、タブレットに採用され、充電端子は基本的にはルール上 USB-C 端子が利用されています。
なお、240Wの出力を許容する USB-PD EPR(Extended Power Range)も発表されていますが、現時点で対応デバイスがごく僅かであることから、この記事では積極的な考慮の対象とはしていません。
・W数の違いは扱える電力量の違い
USB-PD 充電器(モバイルバッテリーやACアダプタ等)には、18W、20W、30W、60W など様々なW数の製品が存在します。
これらの数字の違いは、扱える電力量の違いを表したものです。下限は 15W とし、最大 100W までの間の数字が存在し、この数字が大きくなればなるほど充電器のパワーが増加します。
そのため、対応するデバイスでは30W充電器を利用した場合よりも、60W 充電器を利用した方がデバイスの充電をより速く行うことができます。
・W数はA×Vで算出される
W数はA×Vで算出することができます。
例えば、20V/3A の場合は 60W と言い換えることができます。
・適切なW数の選び方
USB-PD 充電器を選ぶ際、パワーがあるからといってW数が大きいものを選べば良いというわけではありません。
それぞれのデバイス(ラップトップやスマートフォン等)には、受け付ける電気量の上限値が必ず設定されており、USB-PD に対応しているからといって全てのデバイスが100Wまでの入力に対応しているわけではありません。
例えば、iPhone の場合は 18W/20W もしくは 30W(iPhone 13 Pro 以降)が上限値となっており、iPhone を100Wの充電器に繋いだところで最大値の20Wでしか充電されません。
USB-PD 充電器は、W数が上がるにつれ本体サイズが肥大化し、重量も重くなります。さらに価格も上昇します。適切な充電器を選ばなかった場合、リソースの浪費や使用上の不都合を被ることになりますので、必ず使用目的に応じた充電器を選ぶようにして下さい。
・大体の目安
目的に応じた USB-PD 充電器を選ぶ際の目安は以下の通りです。
- スマートフォン:25W
- タブレット:25W〜45W
- ラップトップ:30W〜100W
- iPhone:20W(iPhone 13 Pro 以降の Pro モデルは25W、Pro Max シリーズと 14 Plus は30W)
- iPad:30W〜45W(iPad Pro 12inch は45Wを推奨)
- MacBook Air 13:30W or 70W(M2 で高速充電を使用する際は70W以上)
- MacBook Air 15:70W
- MacBook Pro 13:60W
- MacBook Pro 14:67W〜100W
- MacBook Pro 16:140W(USB-PD EPR 対応が必須)
※ MacBook Pro 16 2021 以降に関しては、140Wの USB-PD EPR 充電器が必要となるが、対応充電器が極めて少ないことから、本デバイスにおいては Apple 純正品の使用を推奨。
なお、これらはあくまでも目安であり、使用するデバイスにより異なります。詳細は取扱説明書やメーカーのホームページを確認して下さい。W数が不足した場合、充電速度の低下やそもそも充電できないという場合もあります。
・PPS ってなに?
近年、USB-PD 充電器の一部に PPS(Programmable Power Supply)の実装を謳う製品が増えています。
この PPS とは、対応デバイスでより効率的な充電を可能とする技術で、充電速度の向上や発熱の抑制などに効果を発揮します。また、Quick Charge 4/4+などの一部の急速充電規格は PPS と同じものと言え、PPS 対応充電器で Quick Charge 4/4+対応デバイスの急速充電を行うこともできます。
・USB-PD デバイスを使って快適なガジェットライフを
USB-PD により、デバイスの充電時間が大幅に短縮されたり、モバイルバッテリーでラップトップを充電できるようになるなど、従来よりも大幅に利便性が向上しています。
しかし、USB-PD 製品は従来の USB を使った充電機器よりも様々な種類が存在し、複雑化してきてます。
本誌では、それぞれの目的に見合った記事を用意していますので、そちらも合わせてご覧いただければと思います。
・急速充電、高速充電、USB-PD、Quick Charge。何がどう違うのかというお話
・【知らないと危険!】充電器や電化製品に書かれている「V」(ボルト) とは?
・【知っておきたいこの違い】スマホ充電の2Aと18Wは何がどう違うの?
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・【簡単】誰でもわかる USB-C と USB-PD の違い
・今だから知っておきたい意外と奥深い 2A と 3A の違い