みなさま、こんにちは。Kazuto Tanabe です。

今回は、Anker PowerPort III 65W Pod Lite をレビューします。本製品は、最大65Wの USB Power Delivery(USB-PD)出力が可能な AC アダプターです。

なお、本製品は仕様に不明確な点があるため、購入に関してはご自身の判断でお願いいたします。

・フォトレビュー

内容物は本体と取扱説明書

本体

プラグは折りたたみ不可

20W、本製品、60W 2ポートと比較

・ずっしり重い

本製品の重量は、公式では99gと謳われており実測値では98gと、他の60W程度の充電器と比較してとても軽いことが特徴の1つとなっています。

しかし、いざ手に取ってみると本体が小型であるため、「小さなボディにギッチリ詰まっている感」からか、逆に他の60W程度の充電器よりも体感的に重量があるように感じます。もちろん、本体重量に偽りはないため、カバンに入れた際の重量などでは小型軽量の恩恵を被ることができます。

また、本製品は本体サイズの小型化を追求した製品であるため、本体のプラグを折りたたむことができません。常時コンセントに接続した状態で使用する場合はそれほど気になりませんが、持ち運びを考える方は他のデバイスを傷つける恐れがあるため、その点は留意する必要があります。

・動作検証

ここでは、USB-C ポートの Power Data Object(PDO)と USB-PD 以外の急速充電への対応の有無、過電圧に対する保護機能の3点を確認しました。

PDO は表記よりも大きい値の場合、デバイスを過電流により破損させる恐れがあり、小さい場合は景品表示法上の問題が生じます。また、USB- PD 規格では USB-PD 以外の急速充電への対応を禁止しています。過電流に対する保護機能は、異常発熱・出火などを防ぐ目的の保安機能として実装されています。

問題のある製品の場合、主にこのいずれかのポイントで問題点が露見するため、本誌ではこの3つの検証結果を主に使用しています。

検証の結果、PPS を除く PDO は製品本体の記載や販売ページに記載されているものと一致していました。USB-PD 以外の急速充電への対応は、Quick Charge 3.0 への対応が確認できました。また、過電流保護に関しては、表記よりもしきい値が高めに設定されているものの、機能自体は有効に動作することが確認できました。

また、USB-PD 規格の充電効率化規格 Programmable Power Supply(PPS)についても、最小/最大電圧設定、最も高いV数が割り当てられていることから、実装自体に問題は認められませんでした。しかし、本体刻印や商品説明では 3.3-21.0V=3.09A となっていますので、上記 PDO の 3.25Aは表記と一致しないことになります。

なお、USB-PD 以外の急速充電規格への対応は、USB-PD の規格に沿わないもので、本来であれば規格違反に該当する仕様となります。しかし別検証で、Quick Charge 使用中でも規定外の電力供給は行われていないことを確認しており、Quick Charge が原因の使用上、保安上の問題が発生することは極めて低いと考えられます。

・検証のレビュー

検証を行い、2点ほど気になる点がありました。

1点目は過電流保護の動作タイミングが少し遅いことです。
例えば、20Vの出力の場合、公称値では20V/3.25A(65W)が本製品の最大出力となっています。しかし、検証では19.66V/3.76A(74.07W)に至るまで本機能が動作しませんでした。しきい値の約+0.76A(約9W)は少し大きすぎる様に感じます。

2点目は通知された PPS が本体などの表記と一致していない点です。
これが設計ミスなのか、製造上の問題なのか、はたまた記載ミスなのかははっきりしませんが、いずれの理由にしろ表記と実際の仕様が一致しないという点に関しては、問題だと思います。

・総評

不明確な点が多く、購入は推奨しない。
PPS 以外の仕様に関して、保安上の問題になるような点は見受けられませんでした。

しかし、PPS の不一致による不都合が存在しないとも言い切れません。また、この件について Anker に問い合わせたものの、具体的な回答を得られなかった点についても余計な疑念を生じさせる遠因となっています。

世の中にまともな USB-PD 充電器が一定数存在するようになった今、わざわざ仕様に疑問符がつく製品を選択する必要はないかと思います。

最終更新日:2023年8月30日

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