みなさま、こんにちは。Kazuto Tanabe です。

読者のみなさまは、USB-A をお使いでしょうか?AirPods シリーズなどのワイヤレスイヤホンの充電や、Apple Watch Series 7 以前の AW などのスマートウォッチの充電などで、まだまだ現役。という方は多いのではないでしょうか。

今回は、Anker より販売が開始された Anker 725 Charger (65W)  をレビューします。本製品は、USB-C と USB-A を1台に備えた USB 充電器となっており、最大65Wの出力が可能となっています。

USB-C と A が混在する過渡期において便利そうな充電器となっています。

・開封

パッケージ(いつもの)

内容物は本体と取扱説明書

本体

USB-C と USB-A

プラグは折りたたみ式

・明らかに規格違反品

本製品は詳しい検証を行わなくとも、製品の仕様表を見るだけで誰でも規格違反品だとわかるようになっています。

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それは、出力仕様の項目であり、USB-C ポートの最大出力は65W、USB-A ポートの最大出力は22.5Wとなっています。しかし、これはあくまでも1ポート単独で使用した場合に限り、これら2ポートを同時に使用すると赤枠の45W+18W(63W)という出力になります。

USB-PD 規格では、USB-C と USB-A の独立・分離実装を求めています。そのため、USB-C を使用中だからといって USB-A の出力が減る、その逆の A を使用中だからといって C の出力が減る。という仕様(CとAの回路を一緒にしてしまう)は、誰が見ても明らかな規格違反となります。

とはいえ、規格上そうなっている。というだけであり、実用上の問題があるのか?と言われれば「ほぼない」ため、あまり気にする必要はないかと思われます。

・本体の仕様をチェック

ここでは、USB-C ポートの Power Data Object(PDO)と USB-PD 以外の急速充電への対応の有無、過電流に対する保護機能の3点を確認しました。

PDO は表記よりも大きい値の場合、デバイスを過電流により破損させる恐れがあり、小さい場合は景品表示法上の問題が生じます。また、USB- PD 規格では USB-PD 以外の急速充電への対応を禁止しています。過電流に対する保護機能は、異常発熱・出火などを防ぐ目的の保安機能として実装されています。

問題のある製品の場合、主にこのいずれかのポイントで問題点が露見するため、本誌ではこの3つの検証結果を主に使用しています。

確認の結果、メーカーが提供する PDO と実際の PDO が一致しており、PPS を含めて問題点は見当たりませんでした。

ただし、急速充電に関しては USB-PD 充電器は USB-PD 以外の急速充電規格に対応することを禁じているガイドラインに反し、Quick Charge などへの対応が見られます。ですが、こちらについては Anker 製品ではお馴染みとなる仕様かつ、実装方法に問題は見受けられなかったため、安全性への影響はありません。

次に、過電流に対する保護機能の動作状況を確認しました。

確認の結果、大きな問題は認められず保護機能は正常に動作するといえる状態であることを確認できました。

最後に、MacBook Air 2018、iPad 9、iPhone SE(第2世代)での充電状況を確認します。

確認の結果、MacBook Air で充電、iPhone・iPad で18W/20Wの高速充電が作動していることを確認できました。

なお、60W充電(入力)が可能なモバイルバッテリーと iPhone 7 を同時に接続した場合、モバイルバッテリーが 20V/2A(40W)、iPhone 7 が5V/1.3A(6.5W)の合計46.5Wで充電できていました。

・使用感

本製品を使用していて、まず感じたことは USB-A の出力が過剰すぎる。ということです。

本製品の USB-A ポートは、公式ではライセンス料回避のためか Quick Charge 3.0/2.0 対応は謳われていません。しかし、実際にこれらの規格に対応するのは先述の通りです。

USB-A は PowerIQ 2.0 対応。同規格はQC 3.0に対応する。

近年発売された多くのデバイスの充電は高速な USB-C に移行しており、USB-A は古いデバイスや、USB-C(PD)の高速充電の恩恵がないワイヤレスイヤホンなどの充電に使用される傾向が強くなっています。

そのため、規格上 USB-A を利用する Quick Charge 3.0 を使用して、「デバイスを高速で充電したい」という需要は昨今ではないに等しく、今頃 Quick Charge 3.0 を採用するデバイスもないため、USB-A の最大性能(22.5W)を使用する機会はほとんどないと思います。

2ポート同時使用時の USB-A の最大出力を18Wにするならば、端子を USB-A ではなく USB-C にすればスマホやタブレットの充電には十分な仕様になります。また、USB-A にするにしても、12W(Apple 2.4A)を上限とし、残った6Wを USB-C の出力に加算する方が現代の使用環境に則したものだと感じました。

サイズ感については、既存の60W USB-C 充電器と比較すると、小型かつ USB-A ポートもあるため、これらを別々に持ち歩いている場合は1台に集約できるメリットはあります。しかし、先述の通りあらゆるデバイスが USB-C での充電に移行してしまっている昨今において、「これ1台あれば」とは言い難いと感じます。

せりだして来るので、結構な威圧感。

もっとも、私が充電器側の USB-C への完全移行を終わらせていること、1人でデバイスを持ちすぎている。という事情もありますので、USB-A の使用目的が明確にあり、デバイスが多くない方には使い勝手が良いのかもしれません。

・総評

明確な使用用途があれば買い。それ以外はオススメしない。

本製品の完成度を端的に言い表すなら、これくらいがちょうど良いと感じます。USB-A と C の回路混同はさておき、基本的な性能や保安機能について大きな問題点は見られませんでした。また、端子周りがシルバーに塗装されている点も、ケーブル接続時のポートの視認性という観点では良い気遣いだと感じました。

しかしながら、2ポート同時使用時の USB-A の出力の過剰さには疑問を持たざる得ず、昨今の使用環境とはかけ離れたものの様に感じます。

そのため、明確な使用用途があれば本製品を選定しても良いでしょうが、USB-C と USB-A が付いている充電器が欲しい。という場合に関しては、他の製品を探した方が良いと思います。

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