みなさま、こんにちは。Kazuto Tanabe です。

この記事では、昨今の USB-C 充電器界隈の高性能・多機能化について、個人的に感じていることを書きます。

これはあくまでも個人の見解であり、今後の状況次第で覆されることが十分にあるものですので、あくまでも「そんな意見もあるのね」程度でご覧いただければと思います。

・Satechi 165W USB-C 4-Port PD GaN Charger という怪物

本誌の定期的な読者の方なら、筆者が Satechi 165W USB-C 4-Port PD GaN Charger を激推ししているのはご存知でしょう。

この製品は、4つの USB-C ポートから合計最大165Wの出力ができるという、2022年上半期では最も性能の高い製品でした。

筆者はこれを MacBook Air、iPad、iPhone、iPhone という組み合わせで使用することが多く、使用しているデバイスが全て同時に高速充電できる性能には感動しています。

しかし、この頃この感動が薄まりつつあります。

・MacBook Air with M2 という別の怪物

筆者は、MacBook Air with M2 を購入しました。

従来まで使用していた MacBook Air 2018(Intel)とは、比べものにならない性能を誇っています。

その比べものにならない性能の中に「省電力性能」というものがあります。

Apple が PowerPC から Intel へとプロセッサを移行して以降、長らく Intel MacBook を使い続けてきた筆者ですが、いずれのモデルでも「3日に1回」の充電は必須でした。

これは、初めての Intel Mac であった MacBook 2007 から MacBook Air 2018 に至るまで、どのモデルにも共通したある種の仕様とでもいうべきものでした。

しかし、Apple Silicon に移行した MacBook Air with M2 は、同じような使い方、使用頻度でも「週に1回」の充電で事足りています。

そのため、MacBook Air with M2 導入以降、Satechi 165W USB-C 4-Port PD GaN Charger に4台のデバイスが同時に接続されている頻度は著しく低下しました。

また、この充電器は4ポート使用時では MacBook Air with M2 の67W 高速充電を利用することができません。

・限界の到来が意外にも早かった

筆者は、Satechi 165W USB-C 4-Port PD GaN Charger を何年も使用できる製品と評価しました。

しかし、MacBook Air with M2 の登場で想定よりもあまりにも早く「限界点」が来てしまったように感じます。

その理由は、先述の「30分で50%以上」と謳われている MacBook Air with M2 の67W高速充電です。

1〜3ポートの同時使用であれば、この高速充電が動作しますが、せっかく4ポートの USB-C 充電器を購入したのにも関わらず、4ポート使用時に高速充電ができないというのはイマイチ気に入りません。

もっとも、4ポート使用中でも60Wの給電はできているため、30Wで充電するよりも高速に充電できてはいますが。

・フラッグシップがお好き。でも…

筆者は何でもかんでも「フラッグシップ」を名乗る製品が大好物です。(もちろん例外も数多くありますが)

ですので、つい最近まで USB-C 充電器界のフラッグシップだった Satechi 165W USB-C 4-Port PD GaN Charger を使用していた訳ですが、あまりにも呆気なくフラッグシップがフラッグシップを名乗るに相応しくない状態になってしまいました。

これは、先ほどの MacBook Air の件もそうですが、HyperJuice 245W GaN Desktop Charger というさらに出力が高い充電器が、比較的まともなメーカーからリリースされました。

そのため、Satechi 165W USB-C 4-Port PD GaN Charger は業界でのフラッグシップという立ち位置から、Satechi のフラッグシップという立ち位置に格下げとなってしまいました。

筆者は、フラッグシップ好きのため、HyperJuice を購入しようかとも検討しましたが、この時点でこの記事の最も重要な要素である「そんなに高性能な充電器はいらなくない?」ということを悟りました。

・スマホに60Wは必要か?

筆者がこれ以上の高性能な USB-C 充電器が不要だと感じた理由の1つ目は、デバイス間の格差です。

なんだそれ?という感じですが、ノートパソコンの充電に必要なW数は年々引き上げ傾向にありますが、タブレットやスマートフォンはせいぜい30Wが上限で、頭打ちになっているものが大多数です。

本誌でよく登場するスマホ(18W)に100W充電器の例。アホとしか…

そのため、「4ポート使用中でも最低45Wの出力ができる充電器です!」といわれたとて、スマートフォンに45Wは明らかに不要です。また、一人でノートパソコンを4台持っている人は少ないでしょうし、複数人で使用するにしても、わざわざ充電器を1台にまとめる必要性は薄いため、これ以上の高性能化が進んでも、それを必要とする人はごく少数でしょう。

裏を返せば、貧弱だった USB-C 充電器も「普通に使う」分に関しては必要十分な製品が増え、これからはニッチな需要に応えていくというターンに入ったともいえます。

また、高性能な充電器が出たとしても、陳腐化する恐れは常にあるため、ノートパソコン用はノートパソコン用。スマホ用はスマホ用。という2台体制にし、定期的に買い換える方が、普通に使うにしてもコストや利便性の面からしても良いものだと思います。

そのため、仮に140W (EPR)+ 100W + 40W + 30W(合計310W)という、Apple ユーザー向けのとんでも充電器が出たとしても、多くの人にとって魅力的な製品ではないのかもしれません。

・高性能化の弊害

USB-C 充電器の高性能化に伴う弊害は、無視できないものだと感じています。

あくまでも筆者の経験でしかありませんが、USB-C ポートを複数持つもの、さらにそこに USB-A ポートも持つ製品などは、遵守しなければならないルールが増え、制御も複雑になります。

出力パターンがどんだけあるんだって話に。

その結果、使い勝手が悪い仕様になったり、よくわからない挙動をする、メーカーが製品設計の時点で見逃した挙動が存在するなど、有名メーカーの製品でもグダグダになりがちです。

これは、先ほど紹介した HyperJuice 245W GaN Desktop Charger でもいえ、筆者がイマイチ購入に乗り気でない理由だったりもします。この観点からいえば、Satechi 165W USB-C 4-Port PD GaN Charger はクセが少なく、使いやすい製品だと感じています。

この、「買ってみないと何が起こるかわからない」という点は高性能化の最たる弊害であり、筆者が「これ以上は良いや」と感じた最大の理由です。

・これからは抑え気味に

これまでに色々な USB-C 充電器を使ってきましたが、今後は USB-C*2 くらいの製品を選ぼうと思います。

2ポート以上の USB-C 充電器も便利といえば便利ですが、なんらかの制限がついてしまうケースが多く、デバイスの買い換えや進化により陳腐化を感じやすかったりと、高価な割に満足度はそう長くは続かない印象です。

ですので、今後は比較的小さな出力の充電器を複数台合わせ、最適なパフォーマンスを追求する。そういうスタンスでいこうと思います。

筆者の USB-C 充電器を使ってきた経験から、個人的な見解を示しておく。これが本記事の存在理由です。しかし、筆者はレビューをお届けするという使命も多少は背負っているため、とんでもないフラッグシップをレビューするということも全然考えられます。

その点は生温かく見ていただき、「通常用途では多ポートは再考した方がよい」とお考えいただければと思います。

最終更新日:2022年12月6日