みなさま、こんにちは。Kazuto Tanabe です。
今回は、Belkin より販売が開始されたモバイルバッテリーと ACアダプタが一体となった充電器、BoostCharge Hybrid Charger 25W + Power Bank 5000 をレビューします。
なお、タイトルの時点で怪しい雰囲気が漂っていますが、かなり散々な批評となりますので、苦手な方はご注意ください。
開封
パッケージ
内容物は本体と取扱説明書
本体
入出力ポート、電源ボタン、バッテリー残量インジケーターは全て下部に集約
インジケーターは白色4段階
USプラグは折り畳み式
本体裏面のボタンを引くことでプラグを取り外せる
今後発売予定の海外用プラグに差し替え可能(クリックで拡大)
本体左側面には各種法規の印刷がびっしり
なぜ Belkin のモバブはダメなのか?
Belkin でもモバイルバッテリーを数多く販売しています。しかし、本誌では一度も取り扱ったことはありません。
その理由は、同社が JBRC非加入メーカーである以外の何者でもありません。詳細については割愛しますが、JBRC非加入メーカーの製品は、処分時に家電量販店などに設置されている回収ボックスを利用することができず、産業廃棄物として本体代金を超える多額の費用をかけて処分する必要が生じます。
名古屋市などの一部自治体では、リチウムイオン電池製品を家庭ごみとして取り扱う対応をしていますが、この対応を行なっている自治体は稀であり、多くの人が処分に困るのは明白です。
同社は、米国などではリサイクルプログラムを展開し、現代に即した環境に配慮を行ったメーカーであることをアピールしていますが、日本国内に目を向けると、そのような取り組みは全く行われておらず、またそのようなことをする予定もないと言及しています。
また、同社のモバイルバッテリーの一部は、何らかの重大な欠陥を抱えており、Amazon レビューなどで不具合報告が多発しているなど、お世辞にもモバイルバッテリーを販売するメーカーとして優れているとはいえず、そのような状況を鑑みて、本誌では扱ってきませんでした。
本体の仕様をチェック
ここでは、USB-C ポートの Power Data Object(PDO)と USB-PD 以外の急速充電への対応の有無、各ポートの過電流に対する保護機能を確認しました。
問題のある製品の場合、主にこのいずれかのポイントで問題点が露呈するため、本誌ではこの3つの検証結果を主に使用しています。
確認の結果、メーカーが提供する PDO と実際の PDO が一致していないことがわかりました。
一致していないのは、いずれのモードの PPS 出力の最大A数で、取扱説明書では 1.8A(モバブ)、2.25A(AC)となっているにも関わらず、実際はそれを上回る数値となっています。ただし、この程度の差異は様々なメーカーで確認できるものであり、PPS の実装方法に問題は見受けられなかったため、保安上の問題に発展することはまずないでしょう。
次に、過電流に対する保護機能の動作状況を確認しました。
過電流に対する保護機能は、異常発熱・出火などを防ぐ目的の保安機能として充電器には必要不可欠なものです。
確認の結果、過電流保護機能はいずれも+0.5A程度で動作することが確認でき、保護機能として有用に動作することを確認できました。
ただし、5V/3Aについては、いずれのモードでも公称値に届いていませんでした。
最後に、各種デバイスへの給電状況をチェッカーを使用して確認します。
確認に使用したデバイスは、iPad 9、iPhone 15 Pro の2機種で、いずれのデバイスでも高速充電が動作していることを確認できました。
ただし、デバイスの本体に USB-C ポートを搭載したデバイスを USB-A 充電器で充電した場合、Apple 2.4A(12W)ではなく、USB-BC 1.5A(7.5W)が充電の上限となるため、Lightning 端子を搭載したデバイスよりも充電速度が遅くなる傾向があります。
モバイルバッテリーとしての性能
次は、モバイルバッテリーとしての性能を確認します。
なお、本製品は製品名では 5,000mAh のモバイルバッテリーと思ってしまいがちですが、説明書や本体に記載されている実際の容量は 4,800mAh であり、製品名で4%の容量詐称をしてしまっています。これは、景品表示法の定める優良誤認に該当する可能性があるもので、適切な表記とはいえないものです。
一般的にモバイルバッテリーの表記容量は、その全てを充電に使用できるわけではなく、発熱や電圧の調節により一定のロスが生まれます。このロス率が20%程度である製品は、モバイルバッテリーとして性能が高い製品と呼べます。
クリックで拡大
本製品のバッテリー容量の表記は、4,800mAhとなっています。
それに対し、実際に有効に使用できる容量である実効容量は13.78Wh(約3,724mAh)となりました。これは、表記容量の77.58%に値し、効率の良いモバイルバッテリーはこの数値が80%以上であることから、本製品はエネルギー変換効率に劣った製品だといえます。
また、本製品はバッテリー残量が低下(インジケーター1つ点滅)してくると、V数の乱高下を始め、安定した電力供給ができなくなります。バッテリーという物の特性上、この現象はある程度致し方がない部分もありますが、大手メーカー製でここまで酷いものは非常に珍しいように思います。
このことから、USB-C 20W出力中かと思いきや、10W前後でしか充電されていないという現象が発生することが予想され、モバイルバッテリーに求められる安定した質の高い電力供給は期待できません。
なお、本製品は100Wh以下のバッテリー容量であるため、手荷物に限り航空機への持ち込みが可能です。
使用感
本製品は、モバイルバッテリーとACアダプタが一体となった 2in1 製品であり、この形態自体は随分前より存在しますが、Belkin としては初の製品となります。
そのこともあってか、デザイン性がどうも悪く、本体の形状や色など、Belkin 製品としてはやや出来が悪いように感じました。
まぁ、スマートとはいえないデザインですね。
また、これは本製品に限った仕様ではありませんが、本体に USB-C と USB-A ポートの両方を有するにも関わらず、同時使用となると合計15Wの出力が最大となります。加えて、モバイルバッテリーモードで使用する場合の USB-C の出力は20Wと、ACアダプタモードよりも5W減少しています。
近年において、USB-PD を利用しない充電は実用に耐えられるものではなく、前者は到底実用的な機能とはいえません。後者についても、近年のデバイスの充電W数の上昇トレンドを考えると、非力に感じてしまいます。
さらに、バッテリー残量インジケーターが本体下部にあるため、充電中に充電状況を視認することが難しく、本体を逆さまにしてコンセントに刺さなければ、充電状況を確認できません。
頭が重くなるのでコンセントからの脱落の原因になる
本製品の本体重量は、実測で180gとそこまで重いわけではないため、上下逆にコンセントに刺しても、自重で脱落してしまうことはありません。しかし、通常の接続方法よりも脱落しやすくなるため、到底薦められた使用方法ではありません。
さらに、上下逆にすればある程度問題を解決できるのは、US プラグに限定される話であり、UK・AU プラグなど、コンセント自体の形状がリバーシブルでない国や地域ではこういうわけにはいきません。
「それならば、着脱可能なプラグをひっくり返して本体につければ良いのでは?」と思われがちですが、先の画像でも分かるとおり、プラグは上下が決まっており、リバーシブルな構造になっていないため、これを行うことはできません。
筆者は、本製品のプラグ(UK)が交換できるという機能に惹かれて、禁断の Belkin 製モバイルバッテリーを購入したという経緯もあるため、この仕様にはかなりの不満を感じています。
なお、2in1 製品特有の仕様である、コンセント接続時にデバイスの充電が優先されるのか、本製品のバッテリーの充電が優先されるのかについては、かなり分かりづらく、本稿執筆までの様子を見る限り、両方の充電を同時に行っているように見受けられました。
総評
購入は推奨しない。
本製品の評価は以上の通りです。製品の完成度以前の話として、処分ができないモバイルバッテリーに価値はありませんし、Belkin ともあろうメーカーが未だに JBRC に加入するという初歩的なことができない意味がわかりません。
また、性能面に目を向けても、何ら良い点はなく、やはり Belkin のモバイルバッテリーだけはやめておくべきだと身をもって認識しました。
もはや、購入前から評価が決まっていたような内容の記事ですが、こればかりは他社の製品を選ぶべきです。