みなさま、こんにちは。Kazuto Tanabe です。
今回は、2023年9月22日に発売となった Apple Watch Series 9(GPSモデル)- 41mmピンクアルミニウムケースとライトピンクスポーツバンド をレビューします。
何が変わったのか
Apple Watch Series 9 の特筆すべき新機能は、主にSoCの完全刷新とディスプレイ輝度の向上でしょう。
Apple Watch Series 6 から Series 8 までの3年間、名称の変更は行われつつもSoC(System on a chip)の基本設計は変わっておらず、性能も据え置きの状態が続いていました。しかし、Series 9 に搭載された S9 SiP は、従来比で GPU 性能が30%向上しています。
さらに4コアの Nural Engine の搭載により、マシンラーニングで2倍の高速化を実現しているとされています。
これにより、全体的なアニメーションやグラフィックの改善および、Siri の実質的なスタンドアロン化(iPhone を介さない応答)を実現しています。
また、ディスプレイの最大輝度が2,000ニトに上昇し、屋外での視認性が大幅に向上しています。その逆に関しても最低1ニトまで輝度を落とせるようになり、映画館などの暗所でも目立ちにくくなりました。
その他にも、ジェスチャー操作(近く利用可能に)、リサイクル素材から製造されカーボンニュートラル化の実現、次世代のUWB採用による各種機能(日本での利用不可)などの新機能や変更点が存在します。
開封
パッケージ
パッケージのサイズも見直しに(上 Series 8 下 Series 9)
入り方などは従来通り
本体とバンド
本体側
内容物は、本体、充電ケーブル、取扱説明書類
バンド(イラストが薄い)
バンドのパッケージは新デザインに
本体
明らかに違う
先述の通り、新しい S9 SiP が採用された Apple Watch Series 9 ですが、普通に使うだけでも Series 8 と比べると挙動が明らかにスムーズになっています。
特にその違いを体感できるのは、文字盤からアプリ一覧への切り替え時で、S8 ではアニメーションがややカクついていますが、S9 ではそれが全くありません。
もっとも、S8 を使っていた時にそのカクつきを気にしたことがあるのか?と言われれば、否であるため、比較しなければわからない程度の差異ともいえます。
また、屋外での輝度についても「絶妙に文字盤が見やすくなった」という感じで、従来よりも屋外での視認性が向上したように感じました。真夏の炎天下の海辺などの遮るものがない環境では、明確な違いを感じ取れそうですが、今年の真夏は過ぎていますし、よくあるその辺の街中でそう感じたというだけですので、現時点では持ち上げ過ぎないこととします。
前作との違いは?
Apple Watch Series 9 は、SoC の刷新でここ数年の Apple Watch とは全く別物となっているのは先の通りです。
しかし、外観上の違いは今回レビューしているピンクアルミニウムを購入しない限り、大きな変化はありません。
S8 と S9 を比べる
ボタン配置なども変わらず
スピーカーグリルなどにも変更はない
センサーが新型になってはいるものの、配置自体に変化はない
昨年の Series 7 から Series 8 への買い換えは、Apple Watch 史上最も変化が薄いものと感じていましたが、今回は新色と SoC の刷新があったため、変わり映えとスペックアップがある、変化に富んだもののように感じています。
ジェスチャー機能
本稿公開時点では使用できなかったジェスチャー機能ですが、watchOS 10.1 のリリースと同時に利用可能となりました。
Apple Watch Series 9 の新機能として、ジェスチャー機能を Apple はプッシュしていました。
実際に何度も使用していますが、使用してみて感じたことは、「意外と強く指を動かさないと反応しないな」ということです。
Apple によると、上記のジェスチャーを Apple Watch 裏面のセンサーで読み取っているとのことですが、誤動作防止なのか、かなりゆっくりかつハッキリとした動作を求められる印象です。
そのため、電話が鳴って、瞬時に指を動かした程度では反応しないことが多々あり、その他のシーンでも Apple がいうほどの気軽さはないように感じました。
この辺りの挙動は、今後のソフトウェアアップデートで改善され、もう少し良いものになりそうな気配はあるため、当面は使い勝手の悪さに目を瞑るしかなさそうです。
現時点では物足りない
watchOS のアップデートにより、ジェスチャー機能が使用できるようになりました。
これにより、かなり物足りなかった Apple Watch Series 9 での体験がやや向上しました。
しかし最大の問題は、Apple Watch Series 9 に新たに搭載された次世代の UWB(ウルトラワイドバンド)に関連する機能の全てが日本国内では利用できない点です。
これは、UWB を利用する新機能である、iPhone を探す機能や HomePod との連携ができないことを指します。
AirTag と似たような機能
UWB 関連の新機能が利用できない背景には、日本の法律上の問題があると推定され、現時点ではこれらの機能が日本でいつ頃利用できるようになるのか。もっといえば、そもそも使用できるようになるのかが極めて不透明です。
筆者は発表会でこれらの機能に価値を感じていたため、日本での利用ができないという制限があることに失望しましたし、Apple Watch Series 9 の価値のかなりの部分が削がれているように感じています。
これが、現在筆者が感じている物足りなさの正体であり、新規購入ならまだしも、買い換え先としては決定打に欠けているのではないかと感じています。
総評
UWB をどう考えるか次第。
正直なところ、今年の Apple Watch のレビュー記事の作成難易度は変化に乏しかった昨年よりも高く、新機能がある割に「まだ使えない」か「日本では使えない」の2択で、かなり困りました。
事実、現時点では動作の高速化とディスプレイ視認性の向上だけが、買い換えにより新たに得られた機能で、これだけなら旧機種でも十分なのではないか?とも考えてしまいます。
今から、Apple Watch デビューをするなら、Apple Watch Series 9 一択でしょうが、Series 7 や 8 を使用している人が買い換えるには、かなり微妙な状態であり、急がないのであれば UWB の使用可能目処が立ってから、もしくは来年の新型でも良いのではないかと思います。