みなさま、こんにちは。Kazuto Tanabe です。

この記事では、充電器やモバイルバッテリーを買おうとすると必ずぶち当たる 急速充電、高速充電、USB-PD、Quick Charge の違いについてご紹介します。

なお、この記事では詳細な技術仕様などには言及せず、どんな方でもわかりやすい内容とし、ガジェットを購入する際に自分に一番合う製品を選びやすくすることを目標に本稿を作成しています。

高速充電、USB-PD、Quick Charge の違いは案外簡単

急速充電については後述するとして、まずは「高速充電、USB-PD、Quick Charge」の違いから。

これら3つの充電規格の違いは、「どのメーカーが規格を作っているか」「どのデバイスに向け作られたものなのか」を理解すれば、簡単に区別できるようになります。

規格名規格策定元(製造)利用可能デバイス
高速充電AppleiPhone X/8/8 Plus・iPad Pro 12.9/10.5 以降の全てのデバイス(USB-PD 準拠)
USB-PDUSB-IFUSB-PD に対応した全てのデバイス
Quick ChargeQualcommQuick Charge 機能を搭載した全てのデバイス

 

「高速充電」以外はかなりザックリとした対応デバイス表記となっていますが、ここからは各規格をもう少し詳しくご紹介します。

高速充電が使えるのは Apple 製品だけ

Apple が2017年に iPhone X/8/8 Plus をリリースした際、「iPhone を30分で最大50%まで高速で充電できます」というアナウンスを行っていました。

同時に Qi 規格を用いたワイヤレス充電にも対応した為、話題がそちらへ流れていた印象ですが、個人的には2017年の iPhone シリーズの最も大きな変更点だと思っています。

高速充電は進化を続け、現在は最大27Wに到達

この、30分で最大50%まで充電できるという機能。これが「高速充電」です。

高速充電には世代が存在し、iPhone 12 シリーズ(2021)以降のデバイスでは 20W の充電に引き上げられた他、iPhone 13 Pro Max 以降の一部モデルでは最大27Wでの充電も可能となっています。

Apple の高速充電は、iPhone 8/8 Plus/X 以降の iPhone および、iPad Pro 2017、iPad mini 5、iPad Air 3、iPad 9 以降の iPad がサポートしています。なお、利用には 18W/20W 以上の USB-PD 充電器と USB-C – Lightning/USB-C ケーブルが必要となります。

Apple 高速充電に関してもっと、詳しく知りたい方はこちらもあわせてご覧下さい。

なお、高速充電と USB-PD を分けた理由は、USB-PD 規格に USB-C – Lightning という規格は定義されておらず、Apple が USB-PD に準拠して独自に作り上げた規格であることを否定することができなかったためです。iPhone 15 シリーズに関しては、USB-C ポートの採用で USB-PD に完全に準拠しています。

USB-PD はスタンダードな高速充電規格

USB Power Delivery 規格は、USB-C 端子を採用した充電器に実装することができる高速充電規格です。

本規格は、USB の規格を策定している非営利組織「USB-IF」が定めた、USB を用いて最大240Wまでの電力供給を実現した規格です。

USB-C 充電器の例

これまで、多くのスマートフォンに採用されてきた USB(BC)の電力供給量が、最大10Wであったのに対し、USB-PD はその24倍にあたる「240W」の電力供給量を誇ります。

従来までは、DCプラグなどからしか供給できなかった大容量の電力を供給できるにも関わらず、端子がコンパクトな設計となっているため、ノートパソコンやスマートフォン、モバイルバッテリーなどへの採用が進み、現在最もスタンダードな急速充電規格の1つとなっています。

Quick Charge は Qualcommの急速充電技術…のはずだった

Quick Charge は、アメリカの半導体メーカー Qualcomm 社が策定し、専用回路を搭載した一部の Android スマートフォンなどで利用できる急速充電技術です。

本規格の最新バージョン「Quick Charge 5.0」は、5分で最大50%まで再充電できるとされている急速充電規格です。

Quick Charge はこれまでに5回ものアップグレードが行われて来た規格で、初代〜3.0までに関しては完全に独自の道を進んでいましたが、4.0 以降は USB-PD との協調路線に転じています。

これにより、これまでは Quick Charge 対応の専用充電器が必要であった対応デバイスの充電が、PPS に対応した USB-C 充電器であれば Quick Charge 対応が謳われていなくとも、Quick Charge(実質USB-PD?)を利用して、急速充電を利用できます。

さらに、Android で一般的であった Quick Charge 以外のメーカー独自の急速充電規格についても、USB-PD に移行・実質的な移行が続出しています。

このような事情もあり、これらは近年では急速に存在感が薄くなってきており、消滅も時間の問題かもしれません。

問題は急速充電

急速充電と一言に言っても、先述の3規格も急速充電と呼べ、世の中には急速充電と呼ばれる技術はまだまだ沢山存在します。

しかし、言葉の初出を考えると USB-A(5V/2A)が元祖の急速充電と呼べるものだと思います。

世界で最も有名であろう5W充電器

これは、5V/0.5Aや5A/1Aを採用する充電器よりも速くデバイスを充電できることを強調するために生まれた言葉であり、特にどこがどのように表現を使うかなどは決められていません。

市場流通している製品を見ると、急速充電の基準にバラツキがあり、酷いものでは5A/1Aで急速充電を謳っているものも存在します。

そのため、急速充電という言葉を鵜呑みにするのはやや危険な行為であり、昨今では先述の3規格も便宜上、急速充電に分類されるため、この表記だけでは何に対して、どういう理由で急速充電なのかを判断することができません。

まとめ

急速充電、高速充電、USB-PD、Quick Charge の違いは規格を作っているメーカーが異なる。

ただし、近年では USB-PD に移行・準拠するケースが多く、近い将来に1本化されるのは間違いない状況です。また、急速充電という言葉の使い方に厳密なルールはなく、メーカーの裁量で使用されているため、これだけで充電速度を推測することはできません。

これらの違いを理解することで、製品選びがよりわかりやすく、的確に行えるようになります。充電器選びの際の参考にしてみて下さい。

最終更新日:2024年2月8日

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