みなさま、こんにちは。Kazuto Tanabe です。
この記事では、エレコムのモバイルバッテリー「EC-C03BK」をレビューします。本製品は、最大20Wの USB-C 出力が可能な10,000mAhのモバイルバッテリーです。
なお、本製品は景品表示法における優良誤認に当たる可能性が極めて高い製品で、購入は推奨しません。
Contents
開封
パッケージ
内容物は本体、充電用ケーブル(C to C)、取扱説明書
本体
左から、電源ボタン、USB-C、USB-A
PSE マーク有
バッテリー残量インジケータは左側面に4段階
低電流モード使用時はグリーンランプが点灯
本体の使用をチェック
ここでは、USB-C ポートの Power Data Object(PDO)と USB-PD 以外の急速充電への対応の有無、各ポートの過電流に対する保護機能を確認しました。
PDO は表記よりも大きい値の場合、デバイスを過電流により破損させる恐れがあり、小さい場合は景品表示法上の問題が生じます。また、USB- PD 規格では USB-PD 以外の急速充電への対応を禁止しています。過電流に対する保護機能は、異常発熱・出火などを防ぐ目的の保安機能として実装されています。
問題のある製品の場合、主にこのいずれかのポイントで問題点が露呈するため、本誌ではこの3つの検証結果を主に使用しています。
確認の結果、一部の PDO が製品記載やメーカーホームページの記載内容と一致していませんでした。
製品パッケージ裏の記載(クリックで拡大)
USB-PD 規格では、5V出力を3Aとしなければならないルール(Power Rule)が存在し、本製品はそれを満たしていません。
これは、先日レビューした同社の他製品と同じく、一部のデバイスで充電ができないといった互換性の問題を引き起こすことがあります。
これに加え、本製品の場合は、5V/3Aへの対応がパッケージなどでは謳われているため、景品表示法の優良誤認に当たる可能性もあります。
なお、対応する急速充電規格については問題はありません。
次に、過電流に対する保護機能の動作状況を確認しました。
過電流に対する保護機能は、異常発熱・出火などを防ぐ目的の保安機能として充電器には必要不可欠なものです。
確認の結果、USB-C ポートの5V/2.4A出力において、公称値を1A以上超過する出力が確認できました。しかしながら、先述の通り5V/2.4Aという出力が問題であり、通常は5V/3Aとすべきであるため、その観点からいうと、0.5A程度の超過となります。
USB-PD 規格に完全に準拠したデバイスであれば、5V/2.4A以上が引き出されるということはありません。しかし、規格に沿わないデバイスであっても、5V/3A程度は許容できると推定されるため、本製品がデバイスを破損させるような大きな問題を生じさせるリスクは低いでしょう。
なお、9V および USB-A ポートの過電流保護機能に問題は見られず、正常に動作しているといえる状態にあります。
最後に、iPad 10、iPad 9、iPhone 14 Pro、iPhone SE(第2世代)での充電状況を確認します。
確認の結果、全てのデバイスでそれぞれの高速充電が作動していることを確認できました。また、USB-A ポートから1A以上の充電も確認できました。
モバイルバッテリーとしての性能
次は、モバイルバッテリーとしての性能を確認します。
一般的にモバイルバッテリーの表記容量(本製品:10,000mAh)は、その全てを充電に使用できるわけではなく、発熱や電圧の調節により一定のロスが生まれます。このロス率が20%程度である製品は、モバイルバッテリーとして性能が高い製品と呼べます。
(クリックで拡大)
本製品のバッテリー容量の表記は、10,000mAhとなっています。それに対し、実際に有効に使用できる容量である実効容量は27.47Wh(約7,424mAh)となりました。これは、表記容量の74.24%に値し、効率の良いモバイルバッテリーはこの数値が80%以上であることから、本製品はエネルギー変換効率が低い製品だといえます。
本製品は100Wh以下のバッテリー容量であるため、手荷物に限り航空機への持ち込みが可能です。
使用感
本製品を数回使用して感じたことは、今にもなって買うような製品ではないということです。
先述の通り、本製品には様々な問題点が存在しますが、それを抜きにしたとしても、昨今のデバイス情勢には合っていないように感じました。
まとめて充電(パススルー充電)なる機能もあるが、充電速度は壊滅的
本製品の USB-C 出力は20Wとなっていますが、この値は少し前まではスマートフォンやタブレットの充電用としては一般的な数値でした。しかし、ここ数年はスマートフォンで25W、タブレットでは30Wが主流となるなど、最速で充電するために必要なW数が増加しています。
また、USB-A ポートの低電流モードも、充電にW数を必要としないワイヤレスイヤホンなどを想定した機能かと思いますが、こちらも近年では充電に必要なW数が上昇しているため、本機能を必要とする人は数年前よりも大幅に減っていると思われます。
さらに、根本的に USB-A を使用していないというケースも十分に考えられ、仕様的には少し古い製品と考えるべきです。
とはいえ、本製品の発売は2020年であるため、それを2023年に使って「スペックが低い」というのはナンセンスであり、褒められた行為ではない点には留意して下さい。
総評
全く価値のない製品。
本製品の完成度を端的にいうならばこうなります。USB-C ポートの仕様に問題が見られる上、根本的にモバイルバッテリーとしての放電性能が近年の製品としては著しく低く、規格に沿わない点を無視したとしても、到底オススメできるような製品ではありません。
また、景品表示法上の問題もあり、消費者の目を欺き、性能の低い製品を押し売りしているとしか思えません。
モバイルバッテリーの購入を検討している方は、他の製品を選択するべきです。