みなさま、こんにちは。Kazuto Tanabe です。

今回は、Amazon で人気のエレコムの30W USB-C&A 充電器である EC-AC14WH をレビューします。

本製品は、最大30Wの USB-PD 出力が可能な USB-C ポートと最大12W出力が可能な USB-A ポートが1台の充電器となった製品です。

開封

パッケージ

内容物は本体とグリーティングカード

本体

ポート

プラグは折り畳み式

2ポート同時使用を想定した製品ではない

Amazon で、過去1ヶ月間に2,000点以上も購入され(本稿執筆時点)、人気であることが伺える本製品ですが、用途を見誤ると後悔が残る製品だと思います。

その理由は、USB-C と USB-A ポートを同時使用すると、2ポート合計で15Wの出力しかできないという仕様です。

要は、1つのポートから7.5W(1.5A)しか出力できず、USB-C の USB-PD 出力が失われてしまうどころか、今や化石級の出力である USB-A の 2.4A(12W)にも届きません。

これでは、ノートパソコンの充電はできませんし、スマートフォンやタブレットを充電するにしても、充電速度が非常に遅く、現代において実用的な水準の充電性能には達していません。

これの20W版もあるのが恐ろしいところ

そのため、本製品は2ポート同時使用を想定した製品ではなく、あくまでも 30W USB-C 充電器と 12W USB-A 充電器が1つにまとめられただけといえる製品です。

なお、USB-PD 規格では、USB-C と USB-A の独立・分離実装を求めています。そのため、USB-C を使用中だからといって USB-A の出力が減る、その逆の A を使用中だからといって C の出力が減る。という仕様(CとAの回路を一緒にしてしまう)は、規格違反とされています。

とはいえ、規格上そうなっている。というだけであり、多くのメーカーがこの点を無視した製品をリリースしており、安全上の問題も今のところは生じていないため、あまり気にする必要はないかと思われます。

本体の仕様をチェック

ここでは、USB-C ポートの Power Data Object(PDO)と USB-PD 以外の急速充電への対応の有無、各ポートの過電流に対する保護機能を確認しました。

問題のある製品の場合、主にこのいずれかのポイントで問題点が露呈するため、本誌ではこの3つの検証結果を主に使用しています。

確認の結果、メーカーが提供する PDO と実際の PDO が一致していることを確認できました。また、本製品の USB-C ポートは USB-PD 以外の急速充電に対応していることも確認できました。

USB-PD 充電器は、規格上 USB-PD 以外の急速充電規格に対応することが禁止されています。しかし、昨今では多くのメーカーがこの点も無視した製品を多数リリースしている上、安全な形で両者を実装することが可能となっています。

本製品も、安全な形でこれらの共存が図られており、他の急速充電規格への対応が使用上の問題に発展することはありません。

次に、過電流に対する保護機能の動作状況を確認しました。

過電流に対する保護機能は、異常発熱・出火などを防ぐ目的の保安機能として充電器には必要不可欠なものです。

確認の結果、USB-C ポートの過電流保護機能はいずれも+0.5A程度で動作することが確認でき、保護機能として有用に動作することを確認できました。

しかし、USB-A ポートの過電流保護機能については、公称値を1A超過した段階でしか作動せず、USB-A の過電流保護機能の動作ポイントとしてはかなり遅いことを確認しました。

また、本製品は、2ポート同時使用中に供給される電気量は、合計最大15Wとなっています。にも関わらず、2ポート同時使用中でも単独ポート(USB-C)で15Wを出力した上で、USB-A からも 5V/1.5A(7.5W)程度の出力が継続されていることが確認できました。

本製品は30W充電器であるため、22W程度の出力ができること自体は当たり前の仕様ですが、2ポートで15Wという制限を自分で設けたのであれば、せめてその制限を守る程度の制御は行なって欲しいと感じます。

なお、これらの問題点は各種規格を厳格に遵守したデバイスであれば、事故やトラブルに発展する可能性は極めて低く、基本的には無視しても良いかもしれません。

最後に、各種デバイスへの給電状況をチェッカーを使用して確認します。

確認に使用したデバイスは、MacBook Air with M2、iPad 10、iPhone 15 Pro の3機種で、MacBook Air で通常充電、iPad と iPhone では高速充電が動作していることを確認できました。

ただし、デバイスの本体に USB-C ポートを搭載したこれらのデバイスを USB-A 充電器で充電した場合、Apple 2.4A(12W)ではなく、USB-BC 1.5A(7.5W)が充電の上限となるため、Lightning 端子を搭載したデバイスよりも充電速度が遅くなる傾向があります。

使用感

かなりの割り切りが見られる本製品ですが、その特性を理解した上で使用するのであれば、使いやすい製品だと思います。

サイズも程よい

30Wの USB-C 充電器としては、常識的なサイズであり、プラグも折り畳めることから、持ち運び時に不都合を被ることはまずないと思います。デザイン的にも無難な仕上がりであり、誰が持っていても違和感なく使用できると思います。

また、30Wの USB-C 充電器としては安価な部類に入るため、ユーザー側が USB-A ポートを無視するという割り切りをして、30W充電器として使用するというのもアリでしょう。

ただし、コストカットを最優先した結果か、接続するデバイスの増減(1ポートで使用中にもう1ポートを使い出す等)を行うと、瞬電が発生し、充電が一時的に停止されます。

これは初期のマルチポート USB-C 充電器にはよく見られた症状ですが、近年ではほぼ見ない仕様で、本製品の内部基盤はかなり古い設計であることが伺えます。瞬電は、場合により充電開始音の大合唱の原因となりますので、その点には注意が必要です。

総評

用途を的確に理解した上で買うならアリ。

本製品はそういえる製品です。先述の通り、本製品に USB-C と USB-A の2ポート充電器としての機能を求めるのであれば、それは大きな間違いであり、この用途であれば他の製品を検討すべきです。

また、若干怪しい過電流保護機能、瞬電、USB-PD のルールに厳密には沿わない点など、製品仕様に問題点が散見されます。とはいえ、それらを「価格」と交換しているといわれればそれまでであり、ゴチャゴチャ言うこと自体がナンセンスかもしれません。

あまりオススメできる道理はありませんが、全てを受け入れる覚悟あれば購入しても良いのではないでしょうか。

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