みなさま、こんにちは。Kazuto Tanabe です。
突然ですが、読者のみなさまのご自宅のインターネット環境は快適でしょうか?本誌の読者層からいえば、「調子良い時は2Gbpsくらい出るよ!」「有線で10Gbpsチャレンジをしている」など、かなりのスピード狂が集っていそうですが、世間的には「ブツブツ切れる」「遅い」など問題を抱えているケースが多いと思います。
インターネットの速度が遅い理由や不安定な理由は様々ですが、Wi-Fi が主流となった昨今では「Wi-Fi ルータ」に起因する問題がかなり割合を占めており、これを見直すことで劇的にインターネット環境が改善するということがしばしばあります。
今回は Belkin サブブランド Linksys より販売されている Wi-Fi ルーター AX3200 をレビューします。最新鋭の Wi-Fi ルータがいかに優れているのか、また Wi-Fi ルータを買い換える必要性などを含めてご紹介していきます。
・開封
パッケージ
内容物は、本体、ACアダプター、Ethernet ケーブル(cat不明)、取扱説明書
端子類
設置例
・速度比較
本製品と現在使用しているルータで速度を比較しました。
比較対象は「一応」Wi-Fi 5(ac)に対応する ASUS RT-AC1200HP です。同機はエントリー向けの Wi-Fi ルータなので、Linksys AX3200 と比較するには対象が不釣り合いではありますが、同じ回線(mioひかり)でもここまで回線の速度に差が出ます。
実用的な話をすると、下り 100Mbps 以上の回線速度があればネットサーフィンや動画の再生などでストレスになるようなレベルではありませんので、下り約 650Mbps であっても体感上は大きな差はありません。
・Wi-Fi ルータを買い替える必要性
近年、テレワークやオンライン学習などが普及し、一般家庭でのインターネット回線の重要性が高まりつつあります。それと同時に、家族全員で使うとネットが遅い…。動画すらまともに視聴できない…。電子レンジを使うと接続が切れる…など、回線の不調・不満が多く聞こえるようになりました。
事実、そのようなケースの原因の多くは Wi-Fi ルータに起因するものであり、ルータの基本性能が低い、化石のようなルータを使い続けている、そもそも5GHzにすら対応していないルータを使っているなどです。
また、これはあくまでも近年の製品であるということで恩恵を受けている仕様ですが、本製品は最新のWi-Fi セキュリティ規格 WPA3 に対応しています。既存の WPS2 は長年、安全性が高い暗号化技術であると言われてきましたが、2017年に脆弱性が発見されています。この脆弱性は、結果的にはパッチの提供で解決できる問題でしたが、セキュリティ関連の規格に関しては最新であることに越したことはありません。
・混雑時間帯にぶち当たる速度の壁
Wi-Fi の世代のアップグレードが完了し、回線速度も向上したため、ここまでは「満足な結果」を得られました。
しかし、運用を開始すると混雑時間帯の速度低下に悩まされるようになりました。インターネット回線の仕組み上、アクセスが集中する夜間や土日などは回線利用者が増加し、回線の速度が低下することはごく一般的な事象であり、根本的な解決をユーザー自身が行うことはできません。
今回、ルータの置き換えに伴い「常時500Mbps」を目指し、環境整備を行いました。しかし、混雑時間帯になるとルータ交換前と回線速度が変わらなかったり、逆に30Mbps以上低下するという現象も発生しました。
混雑時間帯の速度低下はある程度、致し方がないとしても、以前のルータよりも速度が低下するというのは、ルータの設定を詰めれば解決する可能性の高い問題です。そこで、各種設定を詰め出しましましたが、結果的にこれが本製品を見切る原因になりました。
・名門 Linksys だが…
話は変わりますが、Linksys の名前を聞いて、「あぁ」となる方は黎明期からインターネットに関わってきた方だと思います。
Linksys は、かつてはアメリカで最も成功したインターネット関連会社と言われた名門企業で、ルータなどの製品で世界のトップブランドに君臨していた会社です。その後、世界最大のネットワーク機器メーカー CISCO の傘下になり、2013年より Belkin のサブブランドとなっています。
本製品は、ネットワーク機器業界では名門というに相応しい会社の製品。ということになりますが、どうにもイマイチな要素があります。
まず、Wi-Fi ルータの制御を行うファームウェアがイマイチ物足りず、設定を詰めるにもその設定項目が存在しないというところで壁にぶち当たります。具体的な例を出すと、IP固定モードではアクセスポイントモードを利用できない、アクセスポイントモードを利用するとルータの製品特徴として謳われている機能がほとんど利用できないなどです。
また、ハードウェア的にも IPv6 IPoE には非対応など日本のネットワーク環境に則した製品とは言い難いものです。
・結局どうにもならず退役へ
結論から言うと、筆者はこのルータを既に別のメーカーの製品に置き換えています。
混雑時間帯の回線速度の低下に対し、ネットワークエンジニアとチューニングを様々試みましたが、結果的に筆者が求める性能は出ませんでした。結局のところ、IPv6 IPoE に対応していないことが最大のネックとなり、再び別の製品への買い換えという悲劇につながりました。
もっとも、筆者の事前のリサーチが甘かった点、筆者の要求水準が高い点については否定できないものですが、ファームウェアやハードウェア(またはその両者の連携)の洗練度も不足しており、もう少しどうにかならないのか?と思わされました。
・総評
正直なところ、あまり積極的に購入を勧めることはできません。
混雑時の回線速度が云々という話以前に、ファームウェアの作り込みやハードウェア的にも満足できるレベルに達しているとはお世辞でも言えず、名門 Linksys のネームバリューで購入するとかなり痛い目に遭います。筆者も実際その中の一人で、過去に同社製品を使っていたため、その時の信頼性をイメージして、今回本製品を選定しました。
しかし、その印象は過去のものとなっていたようで、購入から置き換えに至るまでの四苦八苦を思うと、もはや良いイメージはありません。
回線速度に大きなこだわりがない場合や、ルータの Wi-Fi 機能しか使わないという方は良いとは思いますが、設定を詰めたい方やルータの多くの機能を多用するという方は別製品を選定した方が良いかと思います。