みなさま、こんにちは。Kazuto Tanabe です。
この記事では、近年増えつつあるマルチポート USB-C 充電器、とりわけ本体に4つのポートを有する製品の比較を行います。
今回比較する製品は、Anker 547 Charger (120W)、Belkin BOOST↑CHARGE PRO 4ポートGaN充電器108W 、Satechi 165W USB-C 4-Port PD GaN Charger の3製品です。本紙ではこれら全ての製品のレビューを行なっていますので、詳しい仕様などは個別記事をご覧下さい。
また、今回比較に使用する3製品は「有名メーカーから出ている製品」として、ピックアップされたものです。中華メーカーや本誌の取り扱い基準を満たさないメーカーは、根本的に比較の対象としませんので、その点はご留意下さい。
・結局オススメはどれか?
先に結論を書きますが、筆者として強くオススメするのは Satechi 165W USB-C 4-Port PD GaN Charger です。
3製品の中で最も高性能
これは、使い勝手や最大165W出力ができるスペック、USB-PD 規格にも準拠していることを考えれば当然のものになります。
しかし、本製品は日本国内での販売は行われておらず、価格も価格であるため、万人がすんなり買えるのか?と言われればそれは別の問題だと思います。
・逆に最もオススメしないのは?
筆者が最もオススメしないのは、Anker 547 Charger (120W) です。
日本で買える最もスペックが高い製品ではある
そもそも、規模が大きくなっただけの中華メーカーである Anker を Belkin や Satechi といったブランドと比較するのもどうかとは思いますが、Anker 547 Charger (120W) は、使い勝手は悪いわ、規格違反品だわで、他の2社と比較できるレベルに達しているかも怪しいところです。
・3製品を比較すると
これら3製品を比較すると、Anker・Satechi と Belkin では大きな違いが存在します。
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それは USB-C の数であり、Anker と Satechi は USB-C が4ポートなのに対し、Belkin は USB-C 2ポート、USB-A 2ポートの構成となっています。これらを比較するのは、対象として不釣り合いであるように思いますが、この3製品は各社の USB-C 充電器のフラッグシップであるため、各社の思想の違いを含め比較することができます。
実際、Belkin BOOST↑CHARGE PRO 4ポートGaN充電器108W は、ワイヤレスイヤホンや Apple Watch の充電を目的として、近年では珍しい実質1A出力の USB-A を2ポート用意しています。その反面、Anker と Satechi は USB-C に完全に振り切っており、各社の USB-A の必要性の認識の違いが露見してきます。
また、デスクトップチャージャーを持ち歩く人はあまりいないとは思いますが、Anker より 出力が45W大きい Satechi の方が Anker よりも軽量であるなど、重量面でも違いが存在します。
・出力で比較
マルチポート製品、とりわけ4ポートにもなると本体価格も高額で、「なんとなく買う」という需要は皆無でしょう。そのため、9割の人が4ポート同時使用を前提として購入するものと思います。
そこで、ここでは4ポート出力時の各製品の仕様を比較したいと思います。
便宜上、Satechi の出力を上下逆に記載しています。
出力で比較すると、Satechi の 60/45/30/30W という出力は多くのデバイスを問題なく充電できる水準です。また、Belkin に関しては USB-C については 65/30W となっており、こちらも充電に十分な水準となっています。
その一方、Anker の 50/30/20/20W のうち、50Wと言う出力は MacBook Pro 13/14 を充電できるかできないかのギリギリのライン(外部ディスプレイ接続時や高負荷時はアウト)であり、3製品の内で最も苦しい仕様となっています。
W数でゴチャゴチャ言われても、あまりピンとこないと思いますので、Apple 製品で問題なく同時充電ができる例を以下に挙げます。
Satechi:MacBook Pro 13(60W)、MacBook Air(45W)、iPad Pro(30W)、iPhone 13 Pro Max(30W)
Belkin:MacBook Pro 13(60W)、MacBook Air(30W)、ワイヤレスイヤホン(5W)、Apple Watch(5W)
Anker:MacBook Air(50W)、iPad Pro(30W)、iPhone(20W)、iPhone(20W)
こうして比較してみると、ノートパソコン2台、タブレット1台、スマートフォン1台の合計4台を一括かつ一部は高速充電できている Satechi の良い意味での異常さが際立っています。
・外観を比較
3製品の外見を比較します。
ポート類
上部から
唯一、Satechi のみ縦置きの想定がある。
重ねると Anker が一番小さい
充電器の見た目を比較してもあまり意味はありませんが、Satechi のみ Apple のスペースグレイ調となっています。
・使用感
いくらスペックが高くても、使い勝手が悪ければ真にユーザーフレンドリーな製品とはいえません。
この観点から比較しても、Satechi の優秀さは際立っており、165Wという高出力を存分に使用し、極力複雑な出力仕様にならないように配慮されています。
Satechi の出力仕様(クリックで拡大)
その一方、同じ USB-C 4ポートである Anker はこの点において最悪なほど複雑な出力仕様を実装しています。
Anker の出力仕様(クリックで拡大)
この2製品を比較すると、1ポート使用時にどのポートでも100Wが出せる Satechi に対し、Anker はこの時点から既に制約が付き始めます。特に酷いのが2ポート使用時であり、Satechi の100W+60Wに対し、Anker は6パターンも出力仕様が存在するなど、もはや「何なの?」と言いたくなるレベルです。
Anker のカオスを極める出力仕様は、全く直感的でない、何気に使うと何が何だかよくわからなくなる仕様であり、あまりにも使い勝手が悪いように感じました。
Belkin の出力仕様は以下の通りです。
唯一 USB-A がある
個人的には、USB-C の出力はうまくまとめられていると思いますが、「USB-A の出力を倍にできなかったのか?」と思います。いくら充電にそこまでのパワーを必要としない小型ガジェット類でも、2ポート使用時の5W(1A)というのは10年以上前の仕様であり、2022年にもなって採用して良いものではありません。
USB-C で高速に充電できる反面、USB-A は低速。となると、中途半端な感じが否めません。
・総評
4ポート USB-C 充電器は始まったばかり。
各製品に触れ、使用しているとこのような感想を持ちました。というのも、最も優れている Satechi 165W USB-C 4-Port PD GaN Charger をもってしても、使い方次第では不満点が残ることがあり、まだまだ完璧な姿には到底及びません。
とはいえ、完璧な姿とは?といわれると、4ポート全てから100Wが同時に出力できる、1ポートは USB-PD EPR の240W出力に対応しているなど、現時点での技術力では到底実現不可能なものになってしまうため、どこかで落とし所を見つける必要があります。
そういった意味でも Satechi 165W USB-C 4-Port PD GaN Charger は非常に良くできたものだと感じますし、Belkin の「まだ USB-A を使うときはあるでしょ?」というスタンスも理解できるものです。しかし、唯一 Anker のみ全ポートを USB-C に振り切っている割に使い勝手が悪く、完成度はそれほど高くない印象を持ちました。
本記事を読み、持つ感想は人それぞれかと思いますが、みなさまの充電器選びの参考になれば幸いです。