みなさま、こんにちは。Kazuto Tanabe です。

今回は、Anker より販売が開始された Anker 547 Charger (120W)(PowerPort III 120W USB-C Charging Station)をレビューします。本製品は、1ポート最大100W、4ポート同時で50W&30W&20W&20Wの合計最大120W出力が可能な USB-C 充電器です。

なお、本記事を読むにあたって、筆者が本製品よりもはるかに高性能な Satechi 165W USB-C 4-Port PD GaN Charger を愛用しているという点にはご留意下さい。また、逐一比較対象となりますので、よければ Satechi のレビュー記事も合わせてご覧いただければと思います。

・開封

いつものパッケージだけど分厚い(約8cm)

箱の中に箱

内容物は本体、電源コード、取扱説明書、両面テープ

両面テープでどこかに固定して使えと?(絶対イヤ)

本体

本体裏面(ゴム足付き)

USB-C ポート

電源ケーブルはメガネケーブル

通電インジケーターは暗めの青色

・出力仕様がカオスすぎる

Anker のマルチポート USB-C 充電器の特徴として、複数ポート使用時の出力仕様がカオスを極める。というものがあります。

合計最大100Wかつ2ポートの同社製品でも、2ポートしかない割にワケがわからないほど複雑を極める仕様を実装しています。本製品もその例に漏れず、出力仕様がカオスを極めています。

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もはや、文章で解説するよりも図解の方が良いと感じたのか、メーカー側も上記のような画像を用意するレベルとなっています。120Wを合理的に分配するための涙ぐましい努力。といえばそうですが、Satechi 165W USB-C 4-Port PD GaN Charger はここまでの酷さではありません。

3、4ポート使用時に出力使用が複雑になることは、製品の特性上致し方がないことですが、2ポートの段階から複雑さを極めるのは、あまりにも早すぎるように感じます。

これは、全く直感的でない何気に使うと何が何だかよくわからなくなる仕様でありあまりにも使い勝手が悪いように感じました。

・本体の仕様をチェック

ここでは、USB-C ポートの Power Data Object(PDO)と USB-PD 以外の急速充電への対応の有無、過電流に対する保護機能の3点を確認しました。

PDO は表記よりも大きい値の場合、デバイスを過電流により破損させる恐れがあり、小さい場合は景品表示法上の問題が生じます。また、USB- PD 規格では USB-PD 以外の急速充電への対応を禁止しています。過電流に対する保護機能は、異常発熱・出火などを防ぐ目的の保安機能として実装されています。

問題のある製品の場合、主にこのいずれかのポイントで問題点が露見するため、本誌ではこの3つの検証結果を主に使用しています。

確認の結果、メーカーが提供する PDO と実際の PDO が一部一致していませんでした

一致しなかったのは、全ポートの PPS 対応と USB-C 2 の最大出力で、PPS は本体記載、製品販売ページ、取扱説明書のいずれにも記載がないものです。後者については保安上問題はないものの、最大60Wとなっている出力が最大63Wであることが確認できました。

なお、USB-C 1 の APDO(PPS の PDO)が「3.3-21.0V / 3A」となっているのは規格違反です。このポートは100W出力が可能なことから、本来であれば5Aをサポートする必要があります。これにより、主には相性問題などの動作不良、最悪の場合はデバイスの破損などを招く可能性があります

なお、それ以外のポートの PPS の実装方法については問題はありません。

また、数多くの Anker 製品で見られる USB-PD 以外の急速充電規格への対応は見られず、こちらは規格に沿う形となっています。(Quick Charge 4.0は PPS 対応であれば自動的にサポートされる)

次に、過電流に対する保護機能の動作状況を確認しました。

確認の結果、大きな問題は認められず保護機能は正常に動作するといえる状態であることを確認できました。

ただし、USB-C 1 で顕著に見られるように、いずれのV数でも1A程度超過しなければ過電流保護が動作しておらず、保護機能のしきい値としては高いものとなります。なお、PPS 対応製品はメーカーを問わず、この傾向が見られるため、本製品に限った問題ではありません。

また、複数ポート使用時の挙動についても全て確認しましたが、いずれの場合も問題なく動作していました。検証データをこれ以上掲載すると、いつまでも終わりませんので、ここについては「安全性の問題はなかった」という言葉に代えて、割愛させていただきます。

最後に、MacBook Air 2018、iPad 9、iPhone SE(第2世代)での充電状況を確認します。

確認の結果、MacBook Air で充電、iPhone・iPad で18W/20Wの高速充電が作動していることを確認できました。

また、これらのデバイス(60W+20W+20W=100W)を全て接続した状態でも、全てのデバイスで高速充電が有効であり、充電器側にも仕様上は20Wの余力があります。

120W出力を2時間継続

なお、動作中の充電器本体の表面温度は、非接触温度計で最大約60度程度となっていました。過去の同社製品が異常な発熱をしていたことを考えると、常識的な範囲内だと思います。

・残念ながら本製品は最適解ではない

本製品への世間のイメージを見ていると、「USB-C 充電器の完成形」という風潮があります。

この風潮について、私は真っ向から否定したいと思っています。

Belkin、Anker、Satechi

その理由は、本製品よりもはるかに高性能な Satechi 165W USB-C 4-Port PD GaN Charger の存在があること以外の何物でもありません。

今回、筆者がこの2製品を執拗に比較する理由は、両製品とも2022年1月の CES 22 で発表された競合製品であるからです。両社とも自社のフラッグシップとして、2製品を世に送り出しており、現時点で持てる技術を全て投入したといっても過言ではない製品であるはずです。

そのため、Satechi が 165W でクセの少ない仕様で出したにも関わらず、Anker は Satechi よりも45W低い120Wかつ、クセが強すぎる仕様になっている姿を見ると、おのずとどちらが優れているかはわかります。

なお、製品ごとの詳しい比較については、こちらをご覧ください。

また、一般的な使用感に関してですが、「今は十分。将来性は皆無」といった感想で、現時点で発売されているデバイスの充電に使用するなら及第点だけど、1年後も便利に使えるか?と言われれば断じて否です。

今は4人家族でも大丈夫!?

現時点でも、MacBook Pro 16 2021 の充電に140Wの USB- PD EPR 充電器が必要であること、iPhone 13 Pro シリーズや iPad Pro は30Wの高速充電が可能である様な状態です。今後、最速でデバイスを充電しようとした時に、さらに大きな出力の充電器が必要になる時代が来るのは確実です。

本製品は Anker のフラッグシップにも関わらず、(MacBook Pro はさておき)現時点でも複数台の30W高速充電すら十分に対応できるか、使用状況によってはかなり怪しい状態です。反面、Satechi は将来の拡張性がある程度確保されており、全ポート使用時でも30Wの高速充電には楽に対応できているため、Anker の格落ち感を強調させてしまっています。

ただし、筆者が過剰な性能を求めていることは否定できない事実であるため、「そういう意見もあるのね」程度に受け止めていただいた方が現実的かと思います。

・もしやキメラか?

本製品を語る上で、Anker PowerPort III 2-Port 100WAnker 521 Charger (Nano Pro) の存在は無視できないものです。

これも4ポートになる

その理由は、本製品がこれら2製品を1つにまとめたような製品であるからです。実際、出力仕様がある程度共通になっており、USB-C 3/4(右側2つ)の出力がいかなる場合でも20Wに固定されているところを見ると、内部的にはこの2台が入っているものと考えられます。

事実、過電流保護機能が動作した際に、USB-C 1/2 で同機能が作動した場合でも USB-C 3/4 の出力は停止されず、その逆も同じ挙動となっています。

しかしながら、これらの製品の出力を合計すると140Wとなり、本製品の方が20W低くなる上、細かい挙動の違いが多数あるため、一概に比較できるものではありません。なお、筆者は「1台にまとめることをこだわらないのであれば、2台持ちの方が使い勝手良くない?」とは思っています。

ただし、Anker PowerPort III 2-Port 100W にあった、電圧変更時や使用ポート数変更時の瞬断は本製品では確認されませんでしたので、この辺りでも改善が加えられているようです。

・レビュワー泣かせ

読者のみなさまには全く関係のない余談ですが、本製品のレビューは死ぬほど手間がかかりました。

そもそも、1ポートが主流。2ポートでも多い方。という USB-C 充電器の世界において、4ポートという数は異次元のレベルです。筆者の検証機材もそのような環境に合わせて用意しているため、アナライザーは足りないわ、バッテリーディスチャージャーは足りなわで、メチャクチャ苦労しました。

普段なら絶対に使わない USB-PD EPR 用のアナライザーまで登場する始末。

また、カオスを極める出力仕様も機材不足と検証点数の爆増の原因であり、同じ4ポート製品である Satechi 165W 充電器よりも手間も時間もかかりました。

本誌はある程度の動作検証を行うスタンスの媒体であるため、上記で行なった検証は必ず行わなければ記事にはできません。

その結果、普通の USB-C 充電器2〜3台分の検証を一括で行わなければならなくなり、死ぬほど疲れました。正直、もう二度と Anker のマルチポート充電器のレビューはしたくないです。(せめて半年は拒否したい)

・総評

積極的にオススメはしない。

本製品の完成度を一言でいうならば、以上になります。そもそも、格落ち感が否めないと言う以前の話として、USB-PD の規格に準拠しない点は看過できません。また、PPS の対応に関しても明記がないこと自体、問題だと思います。

USB-PD の規格上で最大となる100Wの出力ができる充電器において、規格違反があるというのは、安全上極めて好ましくない憂慮すべき点だと感じます。また、使用感においてもユーザーフレンドリーとはお世辞でもいえない出力仕様であり、この状態でしか出せないのであればリリースは時期尚早だったのではないか。と感じます。

とはいえ、現在国内で流通しているマルチポート充電器の中では比較的マシな部類ではあるため、どうしても欲しいという方は、短期間の利用と割り切って購入するなら良いと思います。

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