みなさま、こんにちは。Kazuto Tanabe です。
今回は、エレコムより販売が開始された 20W USB-C 充電器「EC-AC17WH」をレビューします。なお、本製品に USB-C ケーブルが付属しないモデルは「MPA-ACCP32WH」として販売されています。(価格はケーブル付きの方が安い)
本製品は、小型ながらもプラグが折り畳める 20W USB-C 充電器で、主にスマートフォン用の充電器(ACアダプタ)となります。
Contents
・開封
パッケージ
内容物は本体、USB-C – C ケーブル、Thank you カード
本体
前面
プラグは折り畳み式
・類似製品と比較
本製品を 20W USB-C 充電器として、最高の完成度だと思っている Anker 511 Charger (Nano Pro) と比較します。
筐体サイズはほぼ同じ
高さはやや高いものの、プラグの形状で明暗を分けている
スイングプラグ採用なので、軸が中心には来ない
比較してみると一目瞭然ですが、製品サイズに大きな違いはないにも関わらず、本製品はプラグを折り畳むことができます。
筆者が極端にプラグを折り畳めない製品を嫌っているということもありますが、プラグが折り畳めると、カバンなどに入れていても他の物と接触した時に傷をつけたり、製品自体を破損してしまうリスクを大幅に減らすことができます。また、付着したゴミからの発火など安全性の観点から見ても、折り畳めるに越したことはありません。
個人的には、この機構の有無で外出先でも使用するか否かを判断する重要なポイントでもあるため、このサイズでプラグが折り畳めるというのは、とても好印象です。
・本体の仕様をチェック
ここでは、充電器の仕様がどのようになっているかを確認します。
Power Data Object(PDO)、USB-PD 以外の急速充電への対応の有無、過電流に対する保護機能の3点を確認し、安全上の問題がないか、景品表示法上の問題がないかを確認します。
PDO および 対応する急速充電規格を確認したところ、PDO は製品の表記などと一致しており、対応する急速充電規格にも大きな問題は見られませんでした。
次に過電流の保護機能が正常に動作するかを確認しました。
過電流に対する保護機能は、異常発熱・出火などを防ぐ目的の保安機能として充電器には必要不可欠なものです。
確認を行ったところ、いずれのV数でも公称値よりも0.9A程度高い状態にまで達しないと保護機能が動作していないことがわかりました。
特に9Vにおいては、20W充電器を謳うにも関わらず、最大約26Wまで出力が可能でした。*1
たった6Wの超過と思われるかもしれませんが、数値にすると23%の超過であり、標準的な しきい値が+12%付近であることを考えると、大幅に大きいものです。
一般的に過電流保護機能のしきい値は、最大で+0.5A程度で設定されることが多く、過去の同社製品はもちろん他社製品でもこの近辺で保護機能が動作するように設計されています。
そのため、1A近い しきい値は保護機能の しきい値としては高すぎであり、保護機能はあるものの、動作するタイミングが遅いといえます。
しかし、30%近い超過が見られる製品なども存在しており、それらと比較すると、比較的常識的な範囲内のようにも感じます。また、20Wで26W出ることと、100Wで123W出るのとでは、同じ23%の超過でも意味合いがやや変わってくるため、なんとも言い難い要因になっています。
さらに、この仕様でもデバイス側が USB-PD の規格を厳格に遵守していれば、デバイス側の保護機能により20W以上の出力は引き出されないと推定され、直ちに安全性が脅かされるということはないと考えられます。
とはいえ、この仕様は充電器として改善すべき仕様であり、確実な安全性が伴っているとは言い難いものです。
*1 一般的な電気製品の試験に使用される USB-PD 関連試験専用でない負荷抵抗器を使用した場合において
最後に各種デバイスでの充電状況を確認しました。
確認に使用したのは、iPad 9、iPhone SE(第2世代)で、高速充電が正常に充電が作動していることを確認できました。
・使用感
本製品のサイズは非常に使い勝手が良く、Apple 5W 充電器を彷彿とさせるものがあります。
小さすぎてイマイチサイズ感が伝わらない
先述の通り、プラグが折り畳める点も持ち運びを考慮された設計であり、どんなシチュエーションでも使えるものだと思います。
また、本体も実測36gと軽量で、カバンの中に常に潜ませておいたとしても重量が気になることはないでしょう。ただ、デザインに関しては無骨な印象で、もう少し捻りが欲しいと感じた部分でもあります。
・総評
色々と微妙で惜しい。
本製品は、コンセプトや使用感は良いものの、過電流保護機能とデザイン性が微妙で、自信を持ってオススメすることはできません。
過電流保護機能に関しては、なんともいえない絶妙なラインであり、「危険ともいえないけど、だからといって完璧でもない」といった具合で表現するのが良いかもしれません。
20W USB-C 充電器のコンセプトとしては完成されており、多くの人が満足できる製品となりそうなだけあり、「微妙な仕様さえなければ」と思ってしまいます。