みなさま、こんにちは。Kazuto Tanabe です。
今回は、GENELEC 8010AP をレビューします。本製品はリファレンス・スピーカーと呼ばれる、原音に忠実で音響を生業とする方や、放送現場などで使用されるスピーカーです。
なお、プロ用機材ですので、詳細について言及する必要はないかと思いますが、本製品から音を出力させる場合、別途オーディオインターフェースなどが必要となります。筆者は ZOOM UAC-2 を使用しています。
Contents
外観
前面
側面
背面
電源入力とオーディオ入力
底面
背面に電源ボタンと音の調節が可能なスイッチがある
本製品を選んだワケ
本製品は冒頭でも触れた通り、業務用寄りの製品であり、一般家庭に導入するオーディオ設備としてはやや方向性が異なります。
そのため、DTM を愛する方でもない限り、本製品の価値や魅力はあまりわからないのかもしれません。
事実、筆者も DTM を趣味としているわけでもなく、放送業務で使用するわけではありませんので、特段の理由がなければ購入する必要はありません。
にも関わらず、筆者がわざわざ本製品を購入したのは「中田ヤスタカ氏が使用しているから」という理由以外の何者でもなく、同氏の作る音楽が好きな人間としては、「これ一択」でした。
なお、同氏のスピーカーといえば、「GENELEC 8351A(8040BPM)じゃないの?」と思われる方もいらっしゃると思いますが、流石に本体サイズがデカすぎ(H 452 x W 287 x D 278 mm)ますし、音響設備が充実していない普通のマンションの一室に置いたとて、その最高性能を発揮できるとは到底思えないという、超現実的な理由で 8010AP が選ばれました。
8010AP については、同氏のモバイル用スピーカーとなっており、主に出先で使用されているものとみられます。
とはいえ、これらの情報は2019年に本製品を購入した時点の情報であり、現在は変わっている可能性もあります。
音質について
筆者は当初、デスクトップ用のスピーカーとして本製品を購入しましたが、紆余曲折があり、会議スペースのスピーカーとして天井から吊られていた期間の方が長くなっています。それを最近になり、自身のデスクトップスピーカーとしました。
机の上に置くと存在感が凄い
そのため、空間用のスピーカーとして、デスクトップ用のスピーカーとしての2つの側面から、本製品の音の特徴をご紹介します。
まず、天井吊りのスピーカーとしては「ビジネス用なら良いけど、ライブ会場にはちょっと物足りない」という感想を持っていました。
本製品の音はリファレンススピーカーらしく、パリッとしたクリアな音質です。そのため、資料映像を再生したり、オンラインミーティングのスピーカーとしては、相手の声が聞き取りやすいというメリットがありました。
しかし、例えばその場で「パーティーでも」と思い、音楽をかけ出すと、低音がやや弱いように感じ、少し物足りなさを感じます。
低音の弱さについては、各所で指摘されている話で、気になるならば1つ上の 8020DPM を選んだ方が良いのかもしれません。ですが、そもそも論として、リファレンス・スピーカーに「気持ちの良い低音」を求めること自体が、Hi-Fi の概念から外れてしまう気がするので、本製品はこのままで良いと個人的には感じています。
中田氏も、8010AP と iLoud Micro Monitor を併用しており、その理由について後者の方が低音が効き、楽曲制作をしていて楽しいという旨のことを発言されています。
ですので、クラブやライブ会場のような迫力ある重低音を重視する場合、本製品の音にやや物足りなさを感じてしまうかもしれません。特に、中田サウンドは気持ちの良い重低音があった方がより良いので、CAPSULE や Perfume ファンの中では意見が割れそうな気がします。
デスクトップ用としては、「これ以上求める物がない」という感想しかなく、設置場所を考えてもボリュームをそこまで上げられるわけでもありませんし、むしろ過剰なくらいかもしれません。
SE846 と比較すると?
筆者は 8010AP と併せて、SHURE SE846 も使用しています。
両者共に、モニター・イヤホン、リファレンス・スピーカーを名乗る、Hi-Fi を売りとした製品です。そのため、2者の音は非常に似た部分があり、概ね形状が違うだけが明確な違いだとと言ってしまっても問題ないレベルかと思います。
厳密にいえば、SE846 の方が1音1音がはっきりしており、解像感でいえばこちらの方が優れているように感じています。
とはいえ、イヤホンとスピーカーとでは使用する目的や環境が大きく異なるため、一概に比較するのは間違いだと思います。また、先述しましたが、筆者は普通のマンションの一室に 8010AP を設置しているので、設置環境に音が左右されるスピーカーの方が分が悪くなるのは自然なことです。
総評
間違いはない。ただもっと上の世界はある。
本製品の完成度を端的に言い表すのであればこうなります。リファレンス・スピーカーの入門用としては十分過ぎる完成度で、多くの人がこれで十分だと感じられるだけの性能を持っていると思います。
しかし、低音の弱さについては GENELEC の上位製品や他社の製品で克服できるであろうことを考慮すると、全ての人が満足できる、万能な製品ではないといえます。
とはいえ、手軽に設置でき、比較的購入しやすい価格帯としては、これ以上ない完成度だと思いますので、本製品が気になる方は購入されてはいかがでしょうか。