みなさま、こんにちは。Kazuto Tanabe です。

今年もこの季節がやって参りました。新年恒例の、Satechi が CES で発表した USB-C 充電器を日本最速でレビューする回です。

2024年は、ポータブル充電器である Satechi 145W USB-C 4-Port GaN Travel Charger がリリースされ、本誌で過去にレビューした Satechi 108W USB-C 3-Port GaN Wall Charger の後継モデルとなる製品となっています。

なお、先にある程度の結論を書いておきますが、万人ウケはしない製品ですので、ネタ以外で買うのは絶対におやめ下さい。

開封

パッケージ

Satechi お馴染みの内箱スタイル

内容物は本体、ポーチ、トラベルアダプタ、取扱説明書

本体

US プラグは折り畳み式

USB-C ポート

最下部の通電インジケータは青色(眩しくない)

PSEマークはない(クリックで拡大)

気が利いている

本製品には、US プラグの他に標準で UK、AU、EU プラグが付属します。

大体どこでも行ける

これがあると、変換プラグを別途用意する必要がないというメリットがあるのは当然として、専用品はいわばメーカーお墨付き品であり、ユーザーは安心して様々な国で使用できるため、下手なリスクを旅行時に持ち歩かなくて良いというメリットがあります。

この辺は、Apple のトラベルアダプタに通ずるものがあり、個人的に非常にありがたい同梱物だったりします。

本体上部のボタンをスライドすると

アダプタが外れ

他のアダプタに付け替えられる

また、ポーチに関してもこれ系に付属していて悪いことはありませんが、「あまりにも Anker のポーチすぎないか?」といえる酷似具合ですので、ここはもう一工夫あってもよかったかもしれません。

まぁ、これでも不可はないんだけど

過去製品と比較すると

本製品を、前モデルである Satechi 108W USB-C 3-Port GaN Wall Charger および、同じ4ポートの Satechi 165W USB-C 4-Port PD GaN Charger と比較するとどうでしょうか。

165W版は同じ4ポート

結論からいえば、これら2モデルの方が完成度が高いといえるでしょう。

その際たる理由が本体重量であり、本製品の重量は実測で350gとなっており、108Wが198g、165Wの340g(コード含まず)よりも重くなっています。

本体サイズは165W版とほぼ変わらない

もはやそれならば、使い勝手の良い「165Wを持ち歩けば良くないか?」と感じてしまいます。

また、108W版と比較すると、大きさの違いも際立ち、本製品はポータブルの概念はほぼ失われているように感じました。

高機能化よりも軽量化を優先した方が良いかも?

本製品のメリット・デメリット

本製品の特徴として、USB-C 4ポート、最大140W(EPR)出力が可能なことが挙げられます。

筆者はこの2点について、本製品最大のセールスポイントであり、メリット・デメリットだと思う部分です。

重量が重すぎて自重でコンセントから抜けるので、扱いには注意。

まず、本体全てのポートが USB-C であるという仕様については、歓迎すべきものだと感じています。

Anker や Belkin からも類似製品がリリースされていますが、いずれも USB-C*3、USB-A*1 と純然たる USB-C 充電器ではありません。各メーカーの設計思想やユーザーの意見を反映したと思われる、泣きの USB-A ポートですが、2020年代にもなって USB-A ポートをつけられたとて、高速充電もできない、何の役にも立たない無用の長物でしかありません。

これをやられてしまうと、結局は3ポートの USB-C 充電器となってしまい、高価で重量も嵩む4ポート充電器を選ぶ価値がなくなります。

その反面、本製品は全てが USB-C ポートとなっており、4ポート同時使用でも最低20Wの USB-PD 出力が担保されています。

これは、USB-C 充電器のメリットを最大限活かせるものであり、他のどの製品にもない本製品の強みであり、最大のセールスポイントといえる部分でしょう。

しかし、本製品のもう1つのセールスポイントである140W出力については、必要性に疑問を感じています

本製品の出力配分(クリックで拡大)

その際たる理由は、1ポート使用時にのみ140W出力ができるというもので、2ポート以上を同時に使用した場合、140W出力の恩恵を被ることができません。

「それならば、140W充電器と他のマルチポート USB-C 充電器を併用した方が合理的では?」と感じてしまい、本製品に140W出力が本当に必要なのか、EPR非対応にして145Wを上手く分配した方が良かったのではないかなど、140W出力の必要性に疑問を感じます。

また、140W出力に対応してしまったがためか、2ポート以上を同時に使用した場合の出力配分が、どうも使い勝手の悪いものとなっています。

特に65W出力は、本稿執筆時点でも MacBook Air や MacBook Pro 14 を十分に充電できるW数ではなく、これを乱発させた本製品は「現在の使用環境には則さない」状態に陥っています。

本体の仕様をチェック

ここでは、USB-C ポートの Power Data Object(PDO)と USB-PD 以外の急速充電への対応の有無、各ポートの過電流に対する保護機能を確認しました。

問題のある製品の場合、主にこのいずれかのポイントで問題点が露呈するため、本誌ではこの3つの検証結果を主に使用しています。

確認の結果、メーカーが提供する PDO と実際の PDO が一致していることを確認できました。また、240Wケーブルと100W(5A)ケーブル、60W(3A)ケーブルの区別も正常に行われていることも確認できました。

なお、本製品は PPS には対応しません。

次に、過電流に対する保護機能の動作状況を確認しました。

過電流に対する保護機能は、異常発熱・出火などを防ぐ目的の保安機能として充電器には必要不可欠なものです。

確認の結果、概ね公称値+0.6〜0.7A程度で保護機能が動作することを確認できました。しかし、20V/5Aおよび28V/5Aでは、いずれも1Aの超過が認められました。

過電流保護機能は+0.5A程度で動作することが理想であるため、この値はやや高いといわざるを得ず、特に28Vに関しては、1Aの超過でも本製品の合計145W出力を大幅に超える168Wの出力に繋がります。

とはいえ、USB-PD 規格を厳密に遵守した製品であれば、必要以上の電力が引き出されるということはありません。また、+23Wの超過も、このクラスの充電器の余分としては常識的な範囲内だといえ、問題視するようなレベルではないかと思います。

最後に、各種デバイスへの給電状況をチェッカーを使用して確認します。

確認に使用したデバイスは、MacBook Air with M2、iPad 10、iPad 9、iPhone 15 Pro、iPhone SE(第2世代)の5機種で、いずれも高速充電が動作していることを確認できました。

使用感

本製品を使用していて、まず感じることは「クソ重い」と「邪魔過ぎる」という2点です。

これらは先述の通りですので、これ以上は言及しませんが、「勘弁してくれ」と感じていることは否定しません。

また、いざ使おうとした時に初めて気がついたこととして、「Apple Watch の充電できないじゃん」という問題があります。

直挿しタイプの運命

「いやいや、Apple Watch の充電器を一番上にすれば良いじゃん」と思われそうですが、一番上のポートは、4ポート使用時に65W出力ができる貴重なポートです。

そこに、充電に5Wしか必要ない Apple Watch に割くのは冗談めいた話です。また、「充電器自体を上下逆さまにすれば良いのでは?」とも思われそうですが、自重のおかげで秒でコンセントから本製品が脱落するため、これも無理な話です。

また、本製品の140W出力ができる上部2ポートでは、瞬電が発生することを確認しています。

これらのポートで電圧変化やデバイスの増減があると、都度充電が停止され、再開されるという挙動が発生します。これにより、充電開始音の大合唱が幾度も発生し、非常に耳障りで鬱陶しく感じます。

というわけで、108W版の完成度の高さを再認識させられた上、何でもかんでもまとめりゃ良いという訳ではないということを、ようやく完全に理解しました。

総評

ホントにやめた方が良い。

「お前、去年の200Wで懲りてなかったんか」とのツッコミが飛んできそうな話ではありますが、高性能を謳う USB-C 充電器はロクなことにならない傾向にありますので、ネタでも買うのは止めるべきです。

筆者は最悪、レビュー記事を作って笑い飛ばせるという、いわばセーフティネットが存在するため、ある程度の覚悟の上購入しました。しかし、これがない場合のことを考えると、ゾッとしてしまいます。

とはいえ、これはこれで新年早々に断末魔を届けるというネタとしては十分に優秀ではあるため、来年以降も続ける方向で考えています。

話がとっ散らかっていますが、購入は絶対に推奨しませんので、類似製品が欲しい方は日本でも買える165Wを購入して下さい。

145W USB-C 4-Port GaN Travel Charger – Satechi

最終更新日:2024年4月10日

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